キャリアカウンセリングの様々な現場で
活躍される方々によるリレーコラム。

「職業安定広報」2005年2/21号より

女性と仕事の未来館
キャリアカウンセラー
針原桂子

 

 最近少し改善の兆しがあるものの、就職事情は依然として厳しく、リストラを経験したり、なかなか就職できないでいる求職者も多いことと思います。未来館の相談室にも、そのような経歴を持つ女性が多く訪れますが、そのほとんどが、再就職に対する不安とためらいを持っています。
 30歳代後半のその女性は、「これまで3回、自己都合で転職しましたが、どの転職も失敗だった気がします。その上、最後の会社ではリストラされてしまって、どうしてあんな会社に就職してしまったのかと思うと、本当に後悔しています。今度の就職こそはじっくり考えて、絶対後悔しない選択をしたいんです。でも、どうしたら後悔しない選択ができるのかわからなくて…」と、就職をためらう気持ちを話されました。そのときにはすでに、最後に退職されてから6カ月が過ぎていました。
 この女性に限らず、「絶対後悔しない選択」をしたいと考えるのは、きわめて自然なことだと思いますが、では果たして、本当に後悔しない選択というものはあり得るのでしょうか。
 たとえば、仕事内容や労働条件など十分確認して、これなら大丈夫と思って就職しても、配属された部署の上司が気の合わない人で、毎日いやな思いで仕事をせざるを得ないこともあるかも知れません。また、安定した大企業に入って安心していても、業績が悪化して大リストラが断行されることもあり得ます。いくら慎重に判断しようとしても、先々のことをすべて読み切ることはできませんし、予想外のことが起こるのが人生です。
 そんなときに、「ああ、この会社に入ったのが間違いだった。あのとき、他の会社に入っていたら、こんなことにはならなかったのに…」と、考える人にとっては、人生は後悔の種が尽きないと思います。
 でも、その選択をしたときには、自分なりにいろいろ考えて決断したはずですから、その時点ではそれ以上の判断はできなかったという意味で、それが自分にとってのベストの選択だったはずです。それならば、自分の行った選択に責任を持ち、「今の状態は、自分の選んだ結果だ」と受け止め、その上で、事態をよりよい方向に向けていくにはどうしたらいいのかを、前向きに考えていけば、新しい展望が開けます。
来談されたこの女性にも、自分の職業経歴や能力を明確に把握すること、それらを活かせる具体的な仕事の方向性をイメージすること、再就職のための的確な求職活動方法など、納得のいく選択を行うための具体的なサポートや情報提供を行った上で、最後には、自分の決断に自信を持って、一歩を踏み出す勇気を持つことが必要なことを理解してもらいました。
 「絶対後悔しない選択」を求めてためらい、決断できずにいると、最も大切な「選択のタイミング」を逃してしまい、結局チャンスをつかめなくなることもあります。特に再就職では、求職者の年齢やブランクの長さも採否を分ける重要な要因になります。過去の選択に自信が持てず積極的な行動を起こせないでいる求職者の肩を押してあげることも、キャリア・カウンセリングの役割のひとつです。
 「絶対後悔しない選択」を求めることは不可能ですが、「自分の選択に責任を持ち、後悔しないこと」は、考え方次第で誰にでも可能です。
 
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