キャリアカウンセリングの様々な現場で
活躍される方々によるリレーコラム。

「職業安定広報」2005年4/21号より

社団法人 大阪府経営合理化協会
人財開発部マネージャー
土肥眞琴

 

 私は現在、大阪府商工労働部の関係団体(大阪府下中心に約360社の中堅中小企業で構成)事務局に勤務し、主に大学・短大生や若年求職者のキャリア形成支援に携わっています。近年、ニート・フリーター対策の重要性が着目され、いろいろな施策が講じられる中、私にはいささか迷走・暴走の危険性も感じられ始めた現状をお伝えし、ハローワーク等で活躍されている方々と、共に考える機会となれば大変嬉しく思います。
 「企業が求める人材・能力について」…学生や若年求職者対象のキャリア講座で、よく求められるテーマです。また、毎年新卒採用活動シーズンの始まりには、大手就職情報会社等から「企業が求める能力のトップはコミュニケーション能力」といった情報が発信され、学生はこぞって「自己の能力の棚卸」に取り組むこととなります。
 「企業は何を求めているのか」、確かに大事な観点ではあります。エントリーシート・職務経歴書等の作成にあたっては、志望企業が評価するポイント、つまり「採用のツボ」にはまっていなければ一瞥だにされないこともあり得るからです。
 しかし、そもそも「コミュニケーション能力」、「問題解決能力」とは、具体的にはどういうことなのでしょうか? 「対人関係構築力」、「対人支援力」、「人間理解力」等々、何でも「力」をつければ、それ風の趣のある言葉になるかのようです。
 「あなたのやりがいとはどういうことですか?」、「志望動機を自分の言葉で説明してください」という調子で、求職者に対しては、「内容の掘り下げ」を要求するのに、採用側は分かったような分からないような耳障りのいい用語を並べ立てるだけ、では社会的責任を果たしているとは思われません。「当社で評価している能力とは、こういう内容です」ときちんと説明できない採用担当者もいるのではないでしょうか。
 その結果、求職者は自分で考えた「コミュニケーション能力」に照らして、自分にその能力があるかないか、を判断してしまうことになります。
 先日、インターンシップ事前研修で、学生達に、「自分はコミュニケーション能力があると思う?」と尋ねると、約60名のほぼ全員が「自信がない」と答えました。「どうして自信がないの?」、さらに尋ねると「初対面の人に自分から話しかけるのが苦手だから」、「話題が豊富でないから」、「話を盛り上げられないから」等、どうも「コミュニケーション能力がある=話上手、人当たりがいい」と解釈している様子です。簡単に言ってしまえば、「きちんと聴き、きちんと話すことができる」のが、コミュニケーションの基本であることを説明すると、「へ〜、そうなんだ」と一同驚いた様子。
 このように、お互い共通で理解できているようで、確認してみると随分内容に差があった、というような経験は多々あります。いわゆる「若者言葉」ではなく、日常的に使っている言葉でも、学生が表現したいニュアンスと、我々が理解している意味とがかけ離れていることもあります。「耳障りのいい言葉は要注意」、これは採用面接の場面にだけあてはまるものではないのです。学生や若年求職者と接する時、心がけていきたいものです。
 
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