キャリアカウンセリングの様々な現場で
活躍される方々によるリレーコラム。

「職業安定広報」2005年12/21号より

キャリアOne 代表
水町真樹子

 

 初めまして。これから4回、キャリアカウンセリングとメンタルケアの問題について現場の経験をお伝えできればと思います。簡単に経歴を申し上げますと、新卒でIT業界にSE(システムエンジニア)として就職し、その後関連会社へ転籍、営業、マネージャーを経験した後、2002年退職。資格取得後開業し、大学、企業、地方自治体等でキャリア開発系の研修とカウンセリングを実施しています。
 キャリアカウンセリングにメンタルケアの問題がどう関わってくるのかということをお伝えするには、私がなぜ企業を辞めることにしたのかをお話しするのが良いかと思います。IT業界では、女性がマネージャーになる、若年者が年長者の上司になるということは、他の業界に比べ早くから行われ事例も多いですが、その分、女性である、若いということで悩んでいる人材も多くいます。私は、後任にと思い、何人かの優秀な人材をリーダーにしましたが、優秀だからといって、管理職を目指しているばかりではありません。むしろ、余計なプレッシャーがかかるばかりと敬遠している人も多いのです。そういう本人の希望とは別に、時に組織は否応なく職務を与えます。
 ところが、モチベーションは下がるので、今までのような成果は上がらず、本人も組織も苦しむこととなります。また、大変真面目で、一生懸命職務を果たそうと頑張りすぎて空回りし、過剰なストレスがかかってしまうこともあります。そうした時、本来相談相手であるはずの私は、本当は「今は無理せずに、少し休んだ方がいいなぁ」と思いつつも、組織の理論で「応援するから、もう少し頑張ってみよう」としか声をかけられなかったのです。本人はもう限界まで来ているのを知りながら。案の定、ストレスで倒れるか、会社を辞めるか、という最悪の事態が起こります。そして、一度そのように躓いてしまった優秀な人材がそのまま埋もれてしまう姿にどうにもやるせなくなり、組織を離れて、そういう人材のサポートをする道を選びました。
 キャリアカウンセリングは、決して仕事のことだけを考えるものではありません。しかし、人生設計は仕事中心に考えざるを得ません。
 ですから、これから仕事に就く、仕事を変える、職務が変わる、仕事にどう向き合うか、リタイア後はどうするか、といった局面で必要とされるのでしょう。そうである以上、仕事の場面で充実しているかどうかが、大きなポイントとなってきます。上記のように仕事の場面で挫折してしまったというような時は、大きなストレスを抱えているので、ただ環境を変えたり、次のステップに進んだりしても、同じことが繰り返されてしまうばかりか、人生そのものへの危険すらあります。実際、何かしらメンタルケアを必要としているクライエントと多く出会います。その多くは、リファー(臨床心理士や精神科医等メンタル治療の可能な専門家へ引き継ぐこと)を必要とする以前の状況ですが、放置してしまえば、深刻な状況、時に精神疾患にまで至ります。私達キャリアカウンセラーは、その前にメンタル面にも十分に注意を払い、予防的な役割を果たすことができるのではないかと思います。その点で、メンタルケアについて十分な知識を持つことは必要不可欠と言えます。次回は、転職希望者の離職時の事例をご紹介し、メンタルケアの注意点を考えます。
 
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