キャリアカウンセリングの様々な現場で
活躍される方々によるリレーコラム。

「職業安定広報」2006年4月号より

「育て上げ」ネット
キャリア開発事業部
主席研究員
橋本光生

 

 最近マスコミなどで「ニート」という言葉を頻繁に目にしますが、私の所属する「育て上げ」ネットというNPO法人は、ニートをはじめとする若者の就労体験プログラムを中心に、若者自立支援を進めています。私はその中でも若者及び保護者へのセミナーや個別相談を行う事業部の主席研究員をしています。これまでに接してきたニート状態にある若者をみると、多くの場合、働かないのではなく、働きたくても働けないという方が適切だと思います。以下、私が接してきたニート状態の若者の特徴と相談を行ううえで注意していることを紹介したいと思います。

1 初対面の人と話すのが苦手
 ニート状態の若者の多くは初対面の人と話すことは苦手です。当然「育て上げ」ネットに相談に来ること自体が相当にしんどいことです。来所した場合は(一人で相談に来所することは少ないのでニートが保護者等と一緒に来所するケースなどが多い)、相談が始まる初対面の段階でいかに優しく受容的になれるか、「この人は相談しやすそうだな」と思ってもらえることが大事です。できれば、相談コーナーで待つよりは、来所時に入り口まで出迎えることが望ましいです。ある若者は「最初の印象でカウンセラーのことを怖いと思うと、それだけで相談しようという気力がなくなってしまう」と言っていました。

2 相談の主訴が明確でない
 多くの場合、ニートの若者は相談の主訴が明確でありません。例えば「就職活動をできるかどうか不安なんです」「どうすればよいのか全くわからないんです」というようなケースが多いです。そこで、「今回のご相談は何についてですか?」と言うよりは、「今は、どんな状況ですか?」と言ったほうがピッタリきます。あるニート状態にある若者が、キャリアコンサルタントのカウンセリングを受けた時の感想として、「『今日はなんのご相談ですか?』と最初に聞かれたが、相談したいことがわからないから相談しているので、その言葉だけで違和感を感じた」と語っていました。

3 就職活動以前の問題が多い
 主訴は、相談を聞く中でだんだんわかってくる場合がほとんどですが、内容としては、就職活動以前の自己分析のところでつまずいていたり、自分の社会体験の乏しさで悩んでいたりする場合が多く、実際は就職活動に入る前の段階の相談が多くなります。ある若者は、就職の相談といって私と話した時に、時間の8割以上は友人とうまく付き合えないことの悩みを話していました。

4 質問に対する答えに時間がかかる
 そもそも家族以外の人間との対話に慣れていないので、相談時に話す際も質問に対しての返答に大変時間がかかったり、無言の時間がとても多くなったりします。ある若者は、相談時にこちらからの質問に対して、ほとんど「YES」「NO」の身振りだけでずっと答えていました。この相談に不満なのかと思い、その若者の知人から感想を聞いてみると、「不満ではなく、満足していた」というのが後でわかり、驚いたことがあります。このケースほどではなくても、長い沈黙などが相談中にあることも珍しくありません。

 ニート状態でない若者が相談時に上のような姿勢であれば、「やる気がないのでは?」と思ってしまうところですが、ニート状態の若者は多くの場合、まじめで「ニート状態からなんとか脱出したい」「働きたい」と望んでいます。今後さらに、ニート状態にある若者の相談が増えてくると思われます。こうした容易ではない相談ですが、今後ますます切実に求められると思います。参考にしていただければ幸いです。

 
戻る 次へ

一覧に戻る