キャリアカウンセリングの様々な現場で
活躍される方々によるリレーコラム。
「職業安定広報」2004年6/21号より

就職・採用アナリスト
キャリアコンサルタント
((財)社会経済生産性本部認定)
斎藤幸江

 

 首都圏では早くも就職戦線が落ち着きつつある。人事採用担当者からは、「就職情報会社が、2006年春卒業予定者の媒体をもう売り込みに来ている」といった話が聞こえてくる。私のところにも、「○○社に内定したので、就職活動は終わりにします」といった学生からの報告が、徐々に増えてきている。
 2005年新卒入社予定者向けの就職情報サイトのオープン以来、半年余りの彼らの活動を見守ってきたわけだが、終わってみると意外に短かったように感じる。
 スタート時はほとんどの学生が、自分が何をしたいのかや何に興味があるのかがわからない。手探りしながら活動に飛び込んでいくわけだが、採用戦線は彼らの意識と関係なく進行していく。自分の気持ちを見定めてから動きたいと思うものの、そんなことをしていては、出遅れてしまうのではないかという不安も募る。そこで曖昧な気持ちのまま企業への応募を始め、選考に向かう。こんな時期の彼らの悩みは複雑だ。
 「私は自分が何がやりたいのかと、どんな職場で働きたいのかが、全然わからないんです。考えれば、考えるほどわからなくなってしまって。いったい、どうすればいいんでしょうか」
 選考が本格化し始める2〜3月によく聞かれる質問だ。「あぁ、そんなもんだろう」と思うかもしれないが、質問はここで終わらないのである。
 「ところで、明日、□□社の二次面接なんですけど、どうやったら次に進めるでしょうか?」
 学生の相談に不慣れな人は、たいていここで、「え!? やりたいことがわからないんじゃないの? なのに、なぜ、応募している会社があるの?」とびっくりする。
 「特に興味があるってほどでもないんですけど、選考は選考で進めておかないと不安だから。そこで働きたいかは、後で考えられるかなって」
 これが彼らの本音。やりたいことや興味のある仕事に就きたいけれど、それを探していたら間に合わない。不確かな気持ちの揺れや不安にフタをして選考に臨み、一人になった時に、進路の方向に思いを巡らせるわけだ。そんな方法でうまくいくの? と思うかもしれないが、思いのほか、器用な学生は多く、両立させられるケースは結構ある。その結果、「絶対に働きたくない会社の内定をもらってしまったのだけれど、どうすればいいか?」という質問まで飛び出してくる。しかも、複数の学生から相談されるのだ。
 よくもまぁ、絶対に働きたくない会社の選考に何度も通えるなぁと感心するのだが、本人に言わせれば、「こちらの気持ちは別にして、興味を持ってくれている企業との縁を、早々に切るのはもったいない」。その挙げ句、「では2週間だけ内定を保留しながら、『今ここで頑張らないと、あの会社で働くハメになる』と肝に銘じて、必死に活動します」なんて言葉まで飛び出して、あまりのちゃっかりさに唖然とすることもある。しかし、こんなふうにうまく乗り切れない学生は、意識と選考過程の矛盾の間で立ちすくみ、活動を放り出してしまう人もいる。彼らは本当に気の毒だ。
 最近、若年者向けキャリア・コンサルタント養成の施策が打ち出されたが、通常のキャリアカウンセリングの枠組みに収まらない、こうした特異性にも対応できるコンサルタントが、数多く育つことを期待したい。
 
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