キャリアカウンセリングの様々な現場で
活躍される方々によるリレーコラム。
「職業安定広報」2004年7/21号より

就職・採用アナリスト
キャリアコンサルタント
((財)社会経済生産性本部認定)
斎藤幸江

 

 さて、本連載も最終回を迎えた。今回は、若年者の就職支援における私のスタンスを述べようと思う。
 大学生、専門学校生、フリーター、若手社員などをみて感じるのは、多様な人々と触れ合う機会に乏しいこと。「大学時代のクラスメートの三分の一から半数が一人っ子でした」(入社3年目社員)というように、核家族化に少子化が拍車をかけ、家族といっても両親だけ、という若者も多い。しかも挨拶を交わし合い、声を掛け合う地域のコミュニティは、とっくの昔に崩れ去っている。
 いつの時代も成長過程の中では、わからないこと、未知なものが待ち受けている。昔は先輩である大人が、日常の中で経験談としてそれらの知識やアドバイスを伝え、それをもとに若者は我が道を求めてきた。しかし現在は、その過程が手近な情報にとって代わられている。すなわち、困難な場面や考えなければならない時期などを迎えた時、それに立ち向かう勇気を持たず、不安を避けるために手近な情報で仮初めの理論武装をしてしまうのである。
「結局、就職なんかしても意味ないですよね。3人に1人が、大卒就職後3年以内に辞めてしまうっていうし。社員になっても保証とか期待できないですよね。じゃ、苦労して活動しても仕方ないですよ」
「大手以外の会社に入るくらいなら、フリーターと変わりませんよ。逆に中小企業に無理して正社員で入って失敗してトラウマになったら、もっとキツイじゃないですか。鬱とかストレスとか、すごい問題になってますよね?」
 こんなふうに、いちいち認知のフレームにはめ込んであらゆる事象をとらえようとしてしまう。もうちょっと、感情や心の動きに目を向けて、自分自身を考えて欲しいと思うのだが、なかなかこの固い閉じたフレームを打ち破るのは困難だ。
 しかし、彼らは他人の考えや経験に耳を傾けることを拒んでいるわけではない。機会がないので、「コリクツ」にしがみついているのだ。
 昨年、ある専門学校の非常勤講師を務めた。ある学科に同じ入学年度のクラスが二つあったが、退学率が大きく違う。一つは半数近くが辞めており、もう一つは1割前後しか辞めていないと言う。偶然だが前者は全員が高校新卒で、後者は社会人が数名混じっていた。彼らによると、「同じ世代ばかりだと誰かが『こんな学校やってられない』と言い出すと同調してぞろぞろっと辞めてしまうし、止める者もいない。しかし、社会人のいるクラスでは、『今はこんな仕事をしているけれど、将来はこんなことを目指しているんだ』とか、『就職した時はこんな悩みがあった』という会話が自然に行われて、その中で『自分が今、ここでやらなければいけないことは何だろう?』と考えるきっかけを知らず知らず、たくさんもらっていた」とのことだ。これにヒントを得て、昨年の秋からは私が就職相談に応じたり、主催した就職活動講座に参加した学生に、積極的に社会人と自然に接する機会を提供した。幸い参加者からは、「大人になるって、かっこいいと思った」、「話を聞いた後はいつも興奮して、友だちと『気づき』について長い時間、話し合ったものです」といったコメントをいただいている。
 単なる相談に終わらず、「社会で生き抜く力をつけるきっかけを与えていくこと」をモットーに、これからも若者の就職支援を続けていきたい。ご愛読ありがとうございました。
 
戻る 次へ

一覧に戻る