キャリアカウンセリングの様々な現場で
活躍される方々によるリレーコラム。

「職業安定広報」2008年8月号より

キャリアルネッサンス代表
長野マキ


 

 皆様、こんにちは。私は17年近く民間企業の人材開発・キャリア開発の仕事に携わり、7年前からは、キャリアカウンセラーとして、高校生から70代まで、幅広い年齢層の方々に対する相談業務を行っております。個人向け相談のスタートは、東京都世田谷区立男女共同参画センターの「働きたい・働く女性のためのキャリアカウンセリング相談」でした。この事業が始まった平成13年当時は、キャリアカウンセリングの認知度もまだまだ低く、主催者側も試行錯誤の状態。「本当に利用していただけるのだろうか?」という不安の中、相談の数は予想外に多く、ニーズの高さをすぐに実感することができました。現在は世田谷区及びNPO「日本キャリア開発協会」の相談室での相談業務のほか、民間企業の社員の方を対象とした個別相談も行っております。
  このコラムでは、さまざまな相談事例の中から、「クライエントの成長」という視点で、20代、30代の転職・再就職相談のケースをご紹介させていただきます。

何度も異動希望を出しているAさんの悩み
 「もう限界です。助けてください!」こんな1本の電話から相談が始まりました。Aさん(女性、27歳)は大学を卒業と同時に、親の薦める教育関係の会社に就職。総合職で入社したにもかかわらず、仕事は講師のアシスタントや事務的な作業ばかり。毎日が単調でつまらない。講座の企画をやりたいと思い、何度も異動希望を出しているが、状況は何も変わらない。「このままでは自分が死んでしまう」という悲鳴にも近いAさんの気持ちが、電話を通じて伝わってきました。お会いしてみると、もの静かで礼儀正しく、知的な感じがする女性です。気持ちも少し落ち着いた様子で、転職すべきかどうか悩んでいることを、訥々とお話しされました。「Aさんなら転職もすんなり決まりそうだなあ」という印象がありましたが、「企画をやりたい」とは言うものの、なぜ企画なのか?どんな企画を考えているのか?などに話が及ぶと、具体的なことが何も出てきません。

転職を考える前に
 Aさんのように、「今の仕事に満足できないから転職したい」というのは、よくある相談の1つです。しかし、話を聴いてみると、不満な理由はたくさん挙げてくるものの、やりたいことが明確になっていない場合や、表面的な情報やイメージだけで、次の職を決めているケースも多々見られます。Aさんの場合も、企画をやりたい動機が曖昧で、このまま転職しても、再び仕事に不満を持って、再転職を考えるかもしれません。

Aさんにとってベストの選択を共に考える
 転職や再就職支援は、キャリアカウンセリングの中でも特にニーズの高い分野です。しかし、単に次の仕事が決まれば良いわけではなく、新しい環境の中で、クライエントが生き生きと働くことができるのか?転職がクライエントの成長や、より豊かな人生に結びついていくのか?ということも視野に入れた支援が必要となります。特に若年層の場合、職場に定着するスキルの開発は、キャリア発達上の重要な課題です。この課題を避けて、離職と再就職を繰り返せば、どんどん転職が難しくなり、将来的に安定した収入や職を得ることが困難になる可能性さえあるでしょう。
  そこで、転職を視野に入れつつも、Aさんにとってどのような選択が一番良いか、今後の方向性を一緒に考えることにしました。次回はAさんの意思決定プロセスについてご紹介します。

*個々のケースについては、個人が特定できないように内容を再構成してあります。

 
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