キャリアカウンセリングの様々な現場で
活躍される方々によるリレーコラム。

「職業安定広報」2008年12月号より

横浜国立大学経済学部非常勤講師・
キャリアコンサルタント
井田喜治


 

 私がキャリアカウンセリングの仕事に携わるようになって、早くも10年が過ぎました。クライエントの方々の悩みは様々ですが、中でも、学校卒業後、1つの会社に長年勤めてこられた中高年齢者の方々が、諸事情により突然の失業や転職を余儀なくされた時の心の動揺は大変大きいと感じます。再就職できるかという不安に加え、再就職後についても、中高年齢に達した自分が新人として周囲と調和してやっていけるのか、といった不安を抱くケースにこれまで幾度となく向き合ってきました。
そこで今回は、Aさん(50歳代・管理職)のケースをご紹介いたします。

Aさんとの出会い
 Aさんは、諸事情により突然の再就職活動を余儀なくされました。自ら決断したとはいえ、直属の上司が、Aさんの辞職をあっさりと受け入れて引き留めてくれなかったことが、心の傷になっています。「長年会社のために尽くしてきた自分の存在は、一体何だったのだろう」と、Aさんは、長い時間をかけて、傷付いた心の内を吐露されました。

気持ちの整理のお手伝い
 1つの職場で長年こつこつと努力してこられたAさん。突然の状況の変化に気持ちがついていけず、途方に暮れていらっしゃる様子が伝わってきました。1時間程度のカウンセリングでAさんの気持ちが落ち着くとは思えませんでしたが、心の整理のため、Aさんに、私が主宰する、再就職に向けた「グループ・セミナー」への参加をお勧めしました。
 セミナーでは、参加者全員がAさんの話を真剣に聞いてくれました。それまでは、全てが否定されているような失望感に陥っていたAさんでしたが、セミナーでの仲間から自分を受け入れてもらえている安心感があったためか、本来の落ち着きと、第二の人生に向けて歩み出す気力を取り戻すことができたようです。

グループでのカウンセリングの効用
 一対一のカウンセリングには時として限界があり、ご本人の気持ちが落ち着かなければ、職務の整理等に着手することは不可能です。そのような時、Aさんのように、同様の経験をされた方々とのグループ・セミナーに参加することが効果を上げることもあります。しかも、比較的長時間のセミナーであれば、参加者同士や講師との信頼関係構築にもプラスに働きやすく、その後の就職活動に好影響を与えているようにも感じます。

精力的に活動を始めたAさんのその後
 セミナー参加後に意欲を取り戻したAさんは、自発的に再就職活動を開始されました。また、各種セミナーへの参加等によって転職経験者の実体験をうかがう機会を増やし、新しい環境に飛び込むことへの恐怖心をぬぐい去ろうと努めていらっしゃいました。様々な情報に触れることがかえってAさんを気弱にすることもあり、また面接で不採用になり落ち込むことも多々ありましたが、私も一緒に乗り越える覚悟でサポートを続けました。
  その後Aさんは、T社に見事採用されました。不採用が続いた後、面接本番でもAさんの良さを存分にアピールできるよう対策を講じたことも功を奏したようです。Aさんによれば、T社の採用面接の際、他社の面接でご一緒した応募者数名と偶然にも再会する等、再就職の厳しさを痛感されたとのことです。
Aさんは、厳しい再就職活動の末に得た仕事に精一杯打ち込み、頑張って第二の人生を歩んでいきたいと語っていらっしゃいます。

 
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