キャリアカウンセリングの様々な現場で
活躍される方々によるリレーコラム。

「職業研究」2010年夏季号より

ハローワーク、定時制高校
就職支援相談員
(2級キャリア・コンサルティング技能士)
栗田 稔


 

 前号で紹介した30代男性で、前職と全く違う「一般事務」の求人票を持参してきた相談者が、どのように仕事への“意識”を高めて再就職を果たしたか、その対応を紹介します。
 相談者が今まで経験した職種と全く違う仕事を希望している場合は、前職での精神的なダメージも想定されますので、まずは前職での仕事内容だけではなく、本人の感情や気持ちもよく確認します。相談中にラポールが取れると、人間関係などの問題も自ら話してくれます。そして、相談者が希望している職種、今回は「一般事務」でしたが、その仕事内容、求められるスキル、就労条件、雇用状況等を相談者が理解できるように説明します。その結果、前職では就労条件が最初と変わってきつくなり、ストレスがたまって職場の人間関係がうまくいかなくなり退職したが、仕事内容には全く不満がなかったこと、「一般事務」はその反動で希望しただけだったことが分かりました。ただ、次にどのような仕事を探したらよいか自分では分からなかったので、キャリア・コンサルタントによる個別支援の依頼をしたとのことでした。
 相談者が客観的に仕事を振り返れるように、まずは、彼の高校時代からの経歴から話してもらいました。工業高校を卒業後どのように仕事を選んだのか、やりがいや失敗したこと、楽しかったこと、身に付けたスキル、今後どうしたいか、それらのことを相談者がコンサルタントを“信頼”して話してもらえるようにすることが、仕事への“意識”を高めるための重要なポイントになります。なぜならば、相手を“信頼”することで、相談者も再就職に対して真剣に取り組み、仕事に対しての“意識”が出てくるからです。その結果、「機械を操作する仕事をしたい」、「仕事を通じてキャリアアップをしていきたい」、「正社員で長く勤務できる仕事に就きたい」等、やりたい仕事が明確になってきました。
 そこで、30代からでもキャリアチェンジができるいくつかの職種をピックアップして、それぞれの仕事内容が具体的に分かるように、ハローワークの求人票で、仕事内容・資格・給与や休日等の就労条件、雇用状況等の説明をしていきました。その中から是非この仕事をやってみたいと相談者が強く希望したのが「ビルの設備管理」でした。この仕事に就きたいという“意識”が高まってきたため、それ以降の面談時には自ら求人票を持参して、「どのようにしたらこの仕事に就くことができるのか」、「資格はどのようにすれば取得できるのか」等、積極的な質問をするようになってきました。
 「ビルの設備管理」の仕事は未経験では採用されないこと、資格は独学では取得が難しいこと、雇用形態は一般的には契約社員が多いこと、ただし30代の場合正社員への登用の可能性があることを説明しました。この仕事に就くためには「職業訓練校で6カ月勉強する」ことが、時間はかかるが確実な方法なので、訓練校で受講するか、相談者に確認をしたところ、是非トライしてこの仕事にかけてみたいという返答でした。
 仕事への“意識”が高まると、人は次に“行動”に移ります。早速訓練校に応募して、受験科目の「一般常識問題」の勉強を積極的に行い、無事合格を果たしました。そして、訓練期間中にボイラー・危険物取扱等の必須資格も取得しました。訓練終了後、契約社員でしたが、希望していたビルの設備管理会社へ再就職することができました。 その後、2年間無遅刻無欠勤で請負先のビルで真面目に勤務していたところ、ビルのオーナーから会社へ“一生懸命仕事をしている”と連絡が入り、3年目に正社員へ登用され、今は主任として年上の部下の指導や、オーナー対応まで任せられているそうです。
 今回は、仕事への高い“意識”を持ったことで、再就職するための“行動”を起こし、就職後もキャリアアップのための“意識”を常に持って頑張っている社会人を紹介しました。
 次回は、就職難のなか、定時制高校の生徒達がどのように仕事への“意識”を持って就職活動を行ったかを紹介します。

 
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