キャリアカウンセリングの様々な現場で
活躍される方々によるリレーコラム。

「職業研究」2010年秋季号より

ハローワーク、定時制高校
就職支援相談員
(2級キャリア・コンサルティング技能士)
栗田 稔


 

 今回からは、様々な生徒がいる定時制高校での就職・進学サポートを紹介します。
 社会人と違って高校生の場合、仕事をイメージするのは難しいことです。まして定時制の生徒は全日制の生徒よりも、家庭や個人等、様々な事情を抱えている生徒が多いのが現状です。また、中には正社員ではないが、家庭の生計を担うために働いている生徒もいます。逆にこのような生徒は、早くから仕事のイメージはできています。ただし、学校に通いながらの仕事ではなく、社会人として自立して仕事をしていくことをイメージさせなければなりません。
 定時制は4年制のため、まず3年生へのガイダンスで、4年生になってからの就職・進学活動の内容を説明しますが、定時制の生徒は、就職・進学をするよりも卒業することがなによりも一番重要となります。近年、定時制高校の数は統廃合により大幅に減っていますが、逆に不登校生の受け入れ先として生徒の数は増えています。しかし、卒業する生徒は、入学時の6〜7割程度に減ってしまい、中退した生徒の学歴は中卒となってしまいます。私は、3年生へのガイダンスでは、就職・進学活動の説明よりも、まず卒業することの大切さを話します。ふつう、担任の教師でもない就職支援相談員の話など、定時制の生徒で聞く者はほとんどいません。そこで私は、ハローワークで担当している20代で、定時制出身の社会人のメッセージや、中退した若者の、その後苦労した職歴や仕事内容の話をします。そして、この若者達の共通のメッセージを伝えます。
 それは“高校だけは必ず卒業しろ、中卒だとどんな仕事場でもつらい思いをして長く働くことができないし、やりたいこともできない。卒業まで頑張れ!”
 この若者達の現実の生の声を伝えることで、生徒達の就職・進学への意識が若干ですが芽生えてきます。まずは身近な先輩達の話をすることが一番有効な気がします。
 定時制生徒の支援をするにあたり、担任の先生方から、「ここに来る子達は成功体験の少ない子達なので、資質は全日制の生徒に劣ることはないが、どうしてもネガティブになってしまい、前に進もうとしない。だから、まず“自分達でもできるんだ”という自信をつけさせることが大切なんです」という話を聞いていました。
 実際、3年生全員参加でのガイダンスでは、その空気が教室全体に漂っていて、ハローワークで担当しているフリーターへの就職支援よりも大変だということを感じ取りました。そこで生徒一人ひとりと話をしてみたいと思い、簡単な将来に関するアンケートを基に、個別面談をすることにしました。案の定、全く書いてこない生徒もいましたが、会って話をしてみると趣味や家庭のこと、そしてなぜ定時制に入ったか等、いろいろな話をしてくれ、中には卒業後のプランまで考えていた生徒もいました。彼らと面談を行ったことで生徒達の本当の気持ちがわかり、彼らを支援する気持ちが高まりました。ただ共通して、将来やりたいことはあるが、具体的にどうしたらよいかわからないため、そこを生徒目線で理解できるよう進めていきました。また何の興味も示さない生徒には、興味・適性などのアセスメントツールを活用したり、プライベートで興味のある趣味や芸能関連の話をしながら、その業界で働いている人の仕事内容や、その業界へ入る方法などを話していきました。そうするうちに生徒達も、本気で自分達のことを支援しようとしていることや、興味のある業界・職種をよく知っているのだということがわかり始め、少しずつ本音で将来について話をしてくれるようになりました。
 次回は、この生徒達が4年生になり、先生方と協力しながら、どのように就職・進学活動を進めていったかを紹介します。

 
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