キャリアカウンセリングの様々な現場で
活躍される方々によるリレーコラム。

「職業研究」2012年冬季号より

ライフデザイン・
カウンセリングルーム
(臨床心理士、2級キャリアコンサルティング技能士)
伊東眞行


 

 ●不採用が続いて

 キャリア相談室を訪ねてきたDさんは文系学部4回生女子。
 「就活をし始めたころは緊張感がありましたが、20社不採用になり、最近は惰性で企業回りをしているだけのような気分です。自分は何の取り柄もないだめな人間だと思えて…」と泣きそうな表情で話します。
Dさんはコンビニ店でレジのアルバイトをしてきました。決められたことはこつこつとこなせるのですが、接客は苦手とのこと。このような性格を変えたいと思い、人材ビジネスやブライダル関係を多数まわったものの、いずれも不採用でした。
 Dさんは「何をやりたいのか、だんだんわからなくなってきました」と辛そうです。そこで、「自分のやりたいことや強みを見つけ出すために、職業興味検査や性格検査を受けてみては」と提案し、了解を得ました。

 ●アセスメントを受ける

 職業興味検査では、事務分野への興味が強く、対人分野への興味はかなり低く出ていました。また性格検査ではこつこつ取り組み、じっくり考える傾向が強く、創造性や対人面での親和性は大変低い傾向が見られました。
 Dさんに検査結果の特徴を説明したところ、「自分の性格を変えたいと思い、無理をしてきました。結果は正直な自分を表しているように思います」「事務が自分には合っているようなので、今後は一般職を受けようと思います」との感想でした。

 ●模擬面接を体験

 その後、Dさんは一般職で応募しましたが、やはり面接が通りません。そこで模擬面接をしてみると、面接慣れしているためか、質問にはすらすらと答えることができるのですが、パターン的で、気持ちがこもらず不自然さが目立ちました。
 Dさんは「自己PRで、本当の自分を出すと採用されないような気がします。だから明るく元気な性格を演じてしまいます」と話します。
 Dさんに、自己イメージを調べるチェックリストで「現実の自分」と「理想の自分」を評価してもらいました。すると、「現実の自分」は極端にマイナスイメージが強く、「理想の自分」は極端なプラスイメージをもっていました。このギャップの大きさが、Dさんを苦しめているようでした。

 ●リフレーミングで自分の長所に気づく

 Dさんの自己否定意識があまりに強いので、リフレーミング(Reframing)をしてみることにしました。フレームは「枠組み」、リフレーミングは「枠組みを変える」「違った視点から見る」という意味があり、発想を転換して短所の裏にある長所に気づいたり、プラス思考でものを見ていくような技法です。
 Dさんは「劣等感の強い」を「向上心のある」に、「柔軟性の乏しい」を「信念の強い」に、「消極的な」を「謙虚な」に置き換えました。このようにしてみつけた「向上心のある、信念の強い、謙虚な」自分を意識し、自分の強みだと思って面接に臨むようアドバイスしました。Dさんは、何かハッと気づくものがあったようでした。

 ●その後…

 数週間の後、Dさんが「内定がとれました!」と明るい表情で来所しました。
 「これまでは、本当の自分を出してはいけない、という思いばかりが強く、身構えて面接を受けていました。今回は不思議に、自然体の自分で話すことができました」と報告してくれました。
 リフレーミングによって自分の持ち味に気づき、自己肯定感を高められたことが、Dさんにとって大きな転機になったようです。

 
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