キャリアカウンセリングの様々な現場で
活躍される方々によるリレーコラム。

「職業研究」2014年夏号より

さぬき若者サポートステーション
 総括コーディネーター
2級キャリア・コンサルティング技能士
鷲見典彦





 ニート状態にある若者は、就労経験がない、もしくは少ないために、興味や価値観等の特性を仕事に結びつけ、職業イメージをもつことが困難であり、これが若年者向けキャリア・コンサルティング現場において最も課題であると感じていることの一つです。
 D君は高校を中退後、2年間の引きこもり期間を経て独学で高卒認定試験に合格、大学に進学したものの3年生から不登校となり、6年かけて大学を卒業しました。
 大学在学中にほぼ独学で簿記2級の資格を取得し、卒業後は未就職のままニート状態となっていました。アルバイト経験はありませんでした。サポステには保護者と来所し、主訴は「どんな仕事に就いたらいいかわからない」でした。インテーク面談ではほとんど保護者が話し、その間、D君は俯いたまま話すことはありませんでした。
 私はD君の経緯から、課題発見力・実行力・主体性等について優れている点のフィードバックを行いました。しかし、D君の表情は暗いままで自信の回復は感じられませんでした。保護者には、支援の時間をいただきたいこと、次回の面談からは可能であればD君だけで来所してほしいことを話し、D君も同意してくれました。

●枠組みを探す
 2回目以降の面談は、D君が一人で来所しました。できなかったことには触れず、高卒認定試験、大学受験、簿記2級資格試験に取り組んだときのことを詳しく聴きました。
 努力して道を切り開いてきたにもかかわらず、自己肯定感は低く、自分のことを「大したことはない」と思っているようでした。今まで一番頑張ったことを質問すると、「ありません」という答えが返ってきます。私が「ちょっとだけでも、どんなことでもいいから頑張ったことない?」と重ねて聴くと、 暫く考えた後、申し訳なさそうに「トランプのネットゲーム」と答えました。大学に行けなくなった頃、開き直って1日中ネットゲームをやっていたそうです。順位は、全国で最下位だったにもかかわらず、何千人という中で勝ち抜き、3位まで結果を残すことができたと言い、その時のD君は、明らかに話がしやすそうでした。
 私は、学生や職業人のライフロールで話をするのをやめ、余暇を楽しむ人というライフロールの枠組みで話をすることにしました。

●枠組みを拡大する
 余暇を楽しむ枠組みに合わせ、どうやって順位を上げていったのか詳しく聴きました。すると、全国トップクラスの人がどうしてそのカードを手放すのか疑問をもち、その手法を観察し、対戦するグループの中でどうやって味方を作っていくのか等を調べ、試行錯誤のうちに順位を上げていくことができるようになったことがわかりました。
 私は、そこから考える力、前に踏み出す力、チームワークを引き出し、D君にフィードバックしました。

●枠組みを置き換える
 スーパーのライフ・キャリア・レインボーを示し、人生にはさまざまなライフロールがあり、その組み合わせがキャリアであることを説明しました。ライフロールは相互に作用し、余暇を楽しむライフロールは職業人のライフロールに活かすことができることを私自身の虹(ライフ・キャリア・レイン ボー)を例に挙げて話しました。
 D君は人生の虹は人それぞれで違うこと、人の虹と自分の虹を比較することに意味はないことに気づきました。他者の人生を生きる必要のなくなったD君は、表情が明るくなり積極性が出てきました。

●キャリア・コンサルティングに移行する
 余暇を楽しむ人と職業人の二つのライフロールを関連づけたうえで、VRTカードを活用した職業興味検査を実施しました。結果は、Iが7枚、EとCが4枚でした。調査研究的指向と自分で企画管理しこつこつ行う領域の職業に興味があることがわかり、ネットゲームから得た自身の特性が職業興味検査結果の裏づけとなりました。
 その結果、「わからない、できない」という認知が「わかりかけた、できるかもしれない」に変わりました。
 その後のD君は、自身の持ち味を整理し、過去にできたことの振り返りを通して、どのような環境であればできそうなのかについて、考えることができるようになりました。関心が薄かった職業についてもタウンページを活用し、興味をもって調べるようになっています。
 私は、サポステでの活動を通して、D君は必ず就職できると信じています。就職すれば、それが新たな始まりとなり、再び支援が必要となることがあるかもしれません。しかし、人生に無駄はなく、どんな経験でも必ず活かすことができます。過去の点と点をつなげ、今行っていることがどこかにつながると信じていく中で、人生の虹は形成されていくのかもしれません。

 最後になりましたが、大変お世話になりました編集部の方々、温かく見守っていただいた読者の皆様に心から感謝いたします。ありがとうございました。

 
戻る 次へ

一覧に戻る