キャリアカウンセリングの様々な現場で
活躍される方々によるリレーコラム。

「職業研究」2014年冬号より

株式会社LITALICO
 就労支援事業部研修センター
CDA(キャリアデベロップメントアドバイザー)
小中理江



 障害のある方へのキャリアカウンセリングの大きな特徴として、「関わり方」があげられると考えています。例えば、疲れやすさや体調の問題、物事の受け止め方やコミュニケーションの取り方などの特性など、その方がやりにくさを感じている部分に配慮をして、キャリアカウンセリングを進めていくことを心掛けています。

■架空事例 Aさんの場合

 Aさん(29歳女性:気分障害)は医師から、「就労は可能だが、1日6時間程度の勤務からスートすることが望ましい」と言われている方です。この方が悩んでいるポイントは、主に以下の点でした。
 @ 人と会話をすることを喜びに感じるため、コミュニケーション力が必要な営業職をしたい
 A 障害特性により、他者評価に過敏に反応したり、自分の考えと他者の考えの違いに葛藤を生じやすく、結果的に体調を崩してしまう可能性がある( 前職では人間関係が引き金になって体調の悪化に繋がり、退職に至った)

 そのため、「やりたい仕事( 営業職)へ挑戦したい」という気持ちもありながら、同時に「体調を大きく崩して退職をすることになったらどうしよう」という気持ちもあり、「営業職の仕事」を探していくのか、それとも「人との関わりが少ない仕事」を探していくのかで悩んでいました。
 Aさんのお話を伺いながら、長期的な展望と現時点での優先順位について話し合っていったのですが、口頭だけのやりとりでは個々の不安要素に意識が向きすぎてしまい、優先順位がつけられなくなるという状況が生じました。

 気分障害の特性の一つに、意思決定が困難になったり、心配事などに目が向き過ぎてしまい、必要な行動がとれなくなるというのがあります。そこで、本人が迷っているキャリアの道筋の全体像が見えるように、「選択肢を具体化して整理し、可視化する」という作業を提案し、一緒に行ってみました。
 
 ヒアリングをしながら、「考えられる選択肢にどのようなものがありそうか」「各々の選択の中で不安に思うことやメリットだと感じられそうなことは何か」を話し合い、その結果、下の表が完成しました。


 表を見ながら、どの道筋が今の自分にとってしっくりくるかを感じてもらったり、スーパーの「ライフロール」の考え方を説明して、人生には職業人以外にもさまざまな役割があること、「仕事」と「それ以外の部分」で総合的に人生の満足を考えるとどうなるだろう、という質問も交えながら、Aさんにとって望ましい選択肢は何なのかを話し合ってみました。
 しばらくすると、今一番大切にしたいのは、「安心して働けること」であり、「短期での就業や離職を繰り返すことではなく、長期的な就労を果たしていくこと」であるということに気づきました。また「できるだけ早いタイミングで就職をしたい」という希望もあり、「『人とのコミュニケーションが必要な仕事』がしたいと思ったのは、人の笑顔を見ることが自分自身の喜びであったため。長期的に叶えていくか、もしくは仕事以外の場面でもできる」という想いに至りました。

 以上はキャリアカウンセリングで行われるやりとりの中の一部になりますが、一度可視化をしておくことで、継続的なキャリアカウンセリングの際の振り返りツールとしても活用できます。
 このように、ご本人の特性に合わせて関わり方を工夫することで、よりその方の状況にマッチした選択を確認したり、今後の方向性を描いていくことができるのではないかと考えています。

 
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