キャリアカウンセリングの様々な現場で
活躍される方々によるリレーコラム。

「職業安定広報」2004年12/21号より

女性と仕事の未来館
キャリアカウンセラー
針原桂子

 

 私は、女性と仕事の未来館で、キャリア・カウンセリングを通じて、働く女性や働きたい女性の抱える様々な悩みや問題の解決のお手伝いをしています。
 キャリア・カウンセリングに訪れる女性の悩みは大変幅広く多様で、それぞれの悩みは、女性を取り巻く労働市場や職場、さらには社会の現状を反映しているといえます。 
 少子化による労働力人口の減少の問題が、にわかに現実味を帯び、企業も真剣にその対策を検討し始め、「女性の活用・戦力化」は、これまでの建前論ではなく、人材戦略上重要なキーワードになると考えられます。しかし、現状では、女性がその能力を十分に発揮していくためには、まだまだ、多くの課題が見られます。
 先週、立て続けに、2人の30歳前後の総合職の女性のご相談をお受けしました。それは、全くの偶然ですが、2人とも、女性総合職採用の第1期生で、現在の仕事に対して展望が持てないという理由で、転職をしたほうがいいだろうかというご相談でした。
 その中の1人の女性は、大手企業の総合職6年目で、支店勤務を経て、本社で人材教育を担当している方でした。現在の仕事には非常に満足しておられ、今後も人材教育に携わっていきたいと考え、ご自身でもいろいろ勉強をしていらっしゃるのです。ところが、来年あたり、定期人事異動で、小さい支店の支店長クラスとなり、売り上げ目標に追われる生活になりそうなので、この際、ずっと人事や教育に携われる会社か、人材ビジネスの会社に転職したほうがいいのではないかと悩まれていました。
 この方の悩みは、現在の企業の中で働く女性にとって、自分のキャリアの方向付けをしていくための情報がいかに不足しているかを、よく表しています。女性の場合、適当な女性のロールモデルやメンター的な役割の上司や先輩に恵まれないため、企業内のキャリア・パスが見えず、長期的なキャリア・プランをイメージできなかったり、適切な目標設定ができなかったりするケースが少なくありません。その結果、モチベーションが低下したり、せっかくのチャンスを逃したりしてしまったりして、そのことが、さらに、女性の活用が進まない一因となるという悪循環を引き起こしてしまいかねません。
 この方は、会社の人材教育や人材活用制度を改善していくことを目標にしておられ、本社にいれば制度についての提言を行えるチャンスがあるが、支店勤務はやりたい仕事への遠回りになると考えておられましたが、実際は、決してそんなことはないのです。大きな組織を動かすには、それなりの経験に裏打ちされた説得力のある提案が必要ですが、そのためには、現場で人材育成や人材活用を実践し、成果を上げることが、重要な意味を持つはずです。
 この方も、このようなアドバイスを、上司や先輩から受けられる状況であれば、転職をしようかと悩まれることはなかったかも知れません。
 このような状況の改善のためには、まず第一に、企業内のキャリア・カウンセリング機能の充実が求められますが、ハローワークでの職業相談においても、転職をしようかどうしようかと迷っている求職者に対して、自分の辿るべきキャリア・パスや現在の仕事の位置付けについて十分理解できるような情報提供や援助をすることができれば、女性の適切なキャリア選択を助けることになると思われます。
 
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