キャリアカウンセリングの様々な現場で
活躍される方々によるリレーコラム。

「職業研究」2017年No.1より

秋田県立大学
総合科学教育研究センター
准教授
渡部昌平



 前回に引き続き社会構成主義です。社会構成主義には「とっつきにくさ」があるように感じます。どうにか分かりやすく理解できないのでしょうか。
 社会構成主義では「我々は客観的事実の世界に生きているのではなく、経験に意味づけをして自らのストーリーを作り、そのストーリーに従って人生を送る」と考えます(図1)。社会構成主義カウンセリングでは、クライエントの「そのストーリー」を未来の適応に向けて再確認・再構成するプロセスを重視します。

 「そのストーリー(ドミナント・ストーリー)」はその時点では適応的であったかもしれません。しかし変化の時期には、問題や障害として顕れるかもしれません。その時に現在の問題や過去の問題の原因に焦点を当てるのではなく、未来のあって欲しい姿をイメージして現在・過去を再構築していくのが、社会構成主義カウンセリングであるというふうに認識しています(図2)

 「今、自信がないから何もしない」ではなく「未来に自信を持ちたいから今、何かをする」、「将来が不安で今、何もできない」ではなく「将来に不安がないように、今何かをする」と考えていくのです。
 「つらい生活環境だった」(ネガティブな環境)は、「そんな環境でもやってきた」(ポジティブな能力)かもしれません。コンプレックス(ネガティブな資源)は、同時にモチベーション(ポジティブな資源)かもしれません。クライエントにとって何が大切で、何が大切でないのか? 何が使えるのか? ほかに方法はないのか? そう問うていくのが、社会構成主義カウンセリングだと考えています。実は日常生活ではドミナント・ストーリーからはみ出した価値観や人生観が滲み出していることも少なくありません(図3)。

 ですからキャリア選択の場面では「尊敬する人(ロールモデル)」「好きなテレビ番組・雑誌」「好きな言葉・モットー」などの質問を通じて、本人が大切にしている仕事観・人生観を引き出すことが重要なのです。 

※引用文献
渡部昌平(2016)『はじめてのナラティブ/社会構成主義キャリア・カウンセリング』川島書店

 
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