キャリアカウンセリングの様々な現場で
活躍される方々によるリレーコラム。

「職業研究」2017年No.2より

秋田県立大学
総合科学教育研究センター
准教授
渡部昌平



 社会構成主義キャリア・カウンセリングは解決志向アプローチやナラティブ・セラピーと類似しています。一つの理由として、これらアプローチが全て社会構成主義を前提としていることが挙げられます。
 例えば解決志向アプローチでは、現在の問題や過去の問題の原因ではなく、未来の問題解決に焦点を当てます。機械の世界と異なり、人間の世界では過去の問題の原因が分かったとしても、その原因が解決できないことも少なくないからです。例えば問題を起こす少年の家庭に問題の原因があったとして、解決は容易ではありません。まだ相談の際には、問題をクライエントの中にあるもの(=クライエントは問題の責任者/加害者)と捉えるのではなく、問題は周囲や環境との相互関係の結果である(=クライエントもまた問題の被害者)と考えます(図)。そうすることで、クライエントが問題と共に立ち止まることを避け、解決に向けての治療同盟が作りやすくなります。例えば先ほどの少年の例で言えば、「家庭に問題があっても、(学校で問題は起こしているが)頑張って学校には来ている」という資源を見つけやすくなるかもしれません。


 この際、クライエントは「自分が悪い≒責められる自分」という感覚が薄れることから(責められるべきはあくまで「問題」)、自らの問題に立ち向かいやすくなり、解決に向けた行動を起こしやすくなります。「問題の原因を探す」のではなく「解決した未来」をイメージしながら問題に対処していく解決志向アプローチは、クライエントの抵抗や落ち込みも少なく、短期的に問題解決がしやすい技法です。このためブリーフセラピー(短期療法)とも呼ばれます。そして問題解決のために「ミラクル・クエスチョン」や「例外探し」「スケーリング」などの技法を用います。
 ナラティブ・セラピーでも外在化技法が用いられます。近年では「症状に名前をつける」等の典型的な外在化技法には敢えてこだわらず、その出来事(問題)の自分にとっての意味や影響を質問することで、結果的に問題を外在化し、異なる視点に気づかせることが 多いようです。
 社会構成主義キャリア・カウンセリングも、こうした技法にとても似ています。クライエントの弱みに焦点を当てるのではなく、仕事観・人生観や強みに焦点を当てる、このためクライエントが積極的に相談に乗ってきやすく、効果的・効率的(短期)に相談が終結しやすい、などの点です。また、頑張ったこと・楽しかったことなどの「例外探し」を行うことも類似しています。最近では、私もキャリア・カウンセリングでスケーリング技法を活用させていただいています。例外探しやスケーリングを用いることで、「自信や経験が全くない」のではなく、埋もれていた何らかの小さな成功や実績が見つけやすくなるように感じています。
 社会構成主義キャリア・カウンセリングを効率的・効果的に理解・実践するに当たっては、社会構成主義の基礎を大まかに理解した上で、解決志向アプローチなどの類似した技法との「類似点」「相違点」を探すのも有効な方法であると感じています。


※引用文献
・ 渡部昌平編(2017)『実践家のためのナラティブ/社会構成主義キャリア・カウンセリング』福村出版
・ 渡部昌平(2016)『はじめてのナラティブ/社会構成主義キャリア・カウンセリング』川島書店
・ 渡部昌平編(2015)『社会構成主義キャリア・カウンセリングの理論と実践』福村出版

 
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