「職業安定広報」2004年5/6号より

有馬あきこさんは、日本のウェブクリエーターの草分けの一人です。日本におけるインターネットの発展とともに、自らの存在価値を高めてきました。特色あるホームページ作成で高い評価を得る一方、それに満足することなくウェブの可能性をより確固とするため、さまざまな試みをしています。


ウェブクリエーター
(株)クリアキューブ代表取締役

有馬あきこ

PROFILE
1975年、東京生まれ。19歳でウェブ関連の会社を立ち上げる。仕事が忙しくなり、大学を中退。自分のやりたいことを求め最初の会社を退社し、2001年クリアキューブを設立。スピッツをはじめさまざまなアーティストやハウステンボス、国際子ども図書館など多くのホームページを作成。ウェブ関連の書籍・雑誌記事の執筆多数。


























































●ビジネスとしての成長を確信し、19歳で起業

ウェブクリエーターになられたきっかけを教えてください。

有馬 学生時代にホームページを作るアルバイトを始めたのがきっかけですね。インターネットが日本に導入され始めたころで、パソコンの操作ができ、デザインもできる人ということで誘われたんです。パソコンには小学校5年生から親しんでいて、将来はプログラマーになりたいと思っていましたし、高校時代は美術サークルにいましたから。
アルバイトを辞めた後、この仕事はビジネスとしても必ず大きく成長すると思い、最初の会社を作りました。大学1年、19歳のときです。

ずいぶん若い年齢で起業家となられたんですね。

有馬 おそらく育った環境が大きく影響しているのでしょう。父も起業家で、小学生の私にビジネス雑誌を読ませるような人でした。また頻繁に父の会社に遊びに行っていたこともあって、起業することに違和感はありませんでした。ところが、肝心のお金がない。そこで父に借金を頼んだのですが、事業計画書を提出するようにいわれました。何とか事業計画書を作り、父を相手にプレゼンテーションしました。これが私の初めてのプレゼンテーションです。

当時はインターネットやホームページ作成に関するノウハウの蓄積や社会環境も十分ではなかったと思われます。そのような中でどのような訓練を積み、クライアントからの信頼を得るようになられたのですか。

有馬 日本にインターネットが導入されて10年、私もキャリア10年です。日本におけるインターネットの発展とともに私自身もいっしょに育ってきたといえるでしょうね。
子どものころからパソコンに向かっていたので、自分の中にこの仕事をする素地はあったと思いますが、インターネットに関する知識やノウハウは、まったく不十分なものでした。私個人はもちろん、社会的にもそうした蓄積はたいへん貧弱でしたね。そうした中でマニュアルを全部読んだり、関連する本などを通して、自力で知識や技術を得てきました。
大切なのは自分自身の「やる気」、つまり自己学習です。この考えは、今でも変わりません。私自身、そうしてウェブクリエーターとして一人前になり、クライアントからの評価もいただくようになったと思います。

●相手を思いやれば、「いい仕事」ができる

お仕事で最も心がけていらっしゃるのはどんなことでしょうか?

有馬 クライアントにとってどのようなことが「いいこと」なのか、また私たちにとって「いいこと」とは何か、それをいつも考えながら仕事をしています。一言でいえば、相手を思いやるということでしょうか。そうすれば必ずいい仕事ができます。技術が優れていて、サイトのデザインが素晴らしいというだけでは本当に「いい仕事」とはいえない。相手のことを十分理解して仕事をし、それを通して自分たちも幸せになることが大切だと思います。
私たちの仕事を家を建てることに例えるのなら、住むところがほしいと思っているお客様がホームページをご覧になるユーザーの方々であり、仕事を発注するクライアントは建設業者であり、私たちは施工業者といえるでしょう。施工業者は、例えばブロックを積み上げる技術を持ち、その作業ができて当たり前なのです。ところが実際はその当たり前のことが問題になりがちです。
本当に重要なのは、施工業者である私たちが、お客様がどんな人で、どのような家に住みたいと思っているか、クライアントである建設業者の設計者はどのような目的で設計したのかを知ることです。施工業者は建設業者と目的を共有しながら、よりよい家をお客様に提供する義務があります。

お仕事のやりがいや喜びとは、どんなことでしょうか?

有馬 一つはCS(カスタマー・サティスファクション)で、クライアントの喜びが私の幸せでもあります。もう一つはES(エンプロイ・サティスファクション)、つまり従業員の喜びです。この二つの喜びを創出することが、私のやりがいです。

●本物を目指す社会的環境が整ってきた

ライバル企業とはどのような差別化を図っていますか。

有馬 ITバブルを経て、現在、残っているウェブ関連の企業はそれなりの力があるところです。だからこそ、私たちも大きな特色を出す必要があります。
私たちが基本においているのは、お金儲けよりもまず「いい仕事をしたい」ということです。現在外部を含め、20人のスタッフがいますが、みんなこの10年間苦楽を共にしてきた人間たちで、その思いを共有しています。この業界で、10年のキャリアを持つスタッフをこれだけ抱えているところは、少ないでしょうね。
ウェブの世界では最近、「使いやすさ」を表す指標として「ユーザビリティ」や「アクセシビリティ」がいわれるようになりました。それを学術的に裏付けるため、私たちは大学の心理学研究室と共同で、ホームページが人間にどのように作用するのかをテーマとした研究をしています。例えば女性向けのホームページではピンクを使ってデザインすることが多いけれど、その根拠はどのようなことなのかを研究するんです。またその研究結果を、雑誌などに発表し、世間に認知を図っています。今までは「感性」というあいまいなものによってサイトをデザインしてきたけれど、きちんと学術的な理論付けを行ってホームページを構築していこうとしているわけです。
ウェブ・マーケティングの充実も重要なテーマです。その手法はまだまだ貧弱で、十分確立されていません。それをきちんとした方法論に基づいて実施できるような手法を作り、クライアントに提案したいと考えています。

ウェブクリエーターを目指す若者へのアドバイスをお願いします。

有馬 私がこの仕事を始めたころは、草創期で「時の利」がありました。今はそれはもう期待できないけれど、当時とは比較にならないくらいたくさんの情報もツールもあり、容易に入手できる。ITバブルが終わり、ウェブクリエーターも本物しか残っていない時代です。しかし、その本物になるための環境は整っているといえるでしょう。それをうまく自分で活用できれば、努力次第で活躍できるようになると思います。

 
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