「職業安定広報」2004年8/21号より

安部さんは20年のキャリアを持つ薬局薬剤師として、地域の人々の健康を支えてきました。
数多く存在する薬とその情報を、患者さんに合わせて、いかに的確に提供していくかということに日々心を砕いておられます。


ケイロン薬局 薬剤師
安部好弘氏

PROFILE
山形県米沢市出身。昭和58年昭和薬科大学卒業、同年、水野薬局に入局。平成3年ケイロン薬局開局。現在、水野薬局リサーチャーとして在籍。日本薬剤師会医療保険委員会委員長、東京都薬剤師会理事。




















●最初の薬局勤務で薬剤師としての基本を学んだ

安部さんが薬剤師になったきっかけをお話しください。

安部 高校生の頃は海洋学者になりたいという漠然とした夢があったんです。薬剤師になったきっかけといえば、たまたま薬学部に合格したという消極的な理由となります。
薬剤師になり、初めて勤めたのが東大病院の前にある水野薬局でした。ここは、薬剤師の教育や先進的な取組みで日本の薬局をリードしてきたところです。僕はここで薬剤師の仕事のイロハを教えられ、自分が管理者となるまで勤務してきました。よい環境と先輩に恵まれたことが、現在も薬局薬剤師として働くことにつながってきたと思っています。

その後ご自身の薬局を立ち上げられましたが、どのような考えが背景にあったのでしょうか。

安部 水野薬局の管理者時代に様々な先進的な取組みを発表する機会があったのですが、大きな薬局だから、東大病院のそばにあるからできたことなんじゃないかとよく言われてきました。大きな薬局でなくても良い仕事ができると言いたい一心で、12年前に薬剤師の妻に頼み込んでケイロン薬局を立ち上げました。

●その方にとって最適な選択をすることが大切

薬局での仕事の内容と、日頃心がけていることについてお話しください。

安部 まず、医薬分業が進んできましたので、処方せんを見て調剤するという仕事があります。この仕事はただ処方せんどおり調剤するだけではなく、薬局で管理している薬剤服用歴(患者さんの個人情報)と医薬品の情報に基づいて、処方の有効性や安全性を二重にチェックすることが非常に大事な役割となっています。また、患者さんが薬について理解して納得して服薬できるよう情報提供と説明を心がけています。
もう一つは、薬局に来た人の相談にのることです。一般に薬剤師の仕事は薬を販売することだと思われがちですが、薬剤師にとって薬を供給することは目的ではなく、あくまで手段だと思っています。患者さんの訴えがひょっとしたら大きな病気の予兆であったり、何も飲まないでうちで寝ていることの方が適切な場合もあります。相談に来た方の状況をお聞きし、自己治療をする薬を選択するか、それとも薬は不要か、受診を勧めるかなど、その方にとって最適な結果が得られるような選択をすることが大切です。

お仕事の苦労ややりがいはどんなことでしょうか。

安部 自分が選んだ仕事ですから、これが苦労ということはあまりないのですが、現在、研修生と薬剤師2人でやっている小さな薬局なので、休みがとりづらいという悩みはありますね。
仕事のやりがいを感じるのは、われわれが提供したサービスの結果を患者さんからご報告いただき「ありがとう」と言っていただくことでしょうか。この点は、大量販売を目的とした業務とは根本的に違う部分だと思います。

●適切に情報を理解してもらえるようにすることが大切

非常に多く存在する薬の情報を扱う上で、気をつけておられることについてお話しください。

安部 薬局では、最新の情報を入手する投資や努力をしていますので情報が不足するということはありません。ただし、現在では一般の消費者もテレビやインターネット、雑誌などから簡単に情報を手に入れることができますので、ただ情報を持っているだけではプロフェッションとして認められません。薬剤師は、根拠のない情報、宣伝情報、一般論としては正しくてもその個人にとっては有害な情報などから消費者を守ることが求められています。
日常の仕事を通じて、有害情報にフィルターをかけたり、その個人に応じた消化をした情報を提供することを心がけています。

薬剤師にとっての今後の課題や目標となることについてお話しください。

安部 政府の規制緩和の一環として、作用が穏やかな今まで医薬品とされていたものの一部が、駅の売店やコンビニで自由に買える医薬部外品になりました。また、医薬品の販売士のような新たな資格を作ろうという提案もあるようです。このような時代の中で薬剤師が生き残るには、業務の目標や結果を社会に認めてもらわなければなりません。現在、薬学6年制への教育改革や卒後研修などによりレベルアップが進行していますので、それを日常業務における消費者サービスに結びつけることが当面の課題になると思います。

●現場体験を通じて自分の仕事の目的を考えてほしい

これから薬剤師を目指す人へのメッセージをお願いします。

安部 薬剤師と一言でいっても、病院薬剤師、研究職、製薬メーカー勤務、薬局薬剤師、行政での勤務などいろいろな働き方があります。今後薬学教育が6年制となると現場での実務実習が入ってきます。その時はぜひスナップショット的に仕事の方法を表面的に覚えるだけではなく、その仕事がどのような基本概念で何を目的にして行われているのかを、現場の人に聞いたり、自分で感じ取ってほしいと思います。また、できるだけ多くの現場を見て比較した上で、自分に合った働き方を選択してほしいと思います。

 
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