「職業安定広報」2005/21号より

塩田さんは、原料に国産の小麦粉を使い、足踏み、手打ちにこだわって「自分のうどん」を作り続けています。塩田さんの言葉には、「自分のうどん」作りに対する熱い情熱があふれています。


うどん職人
塩田麺業代表
塩田真人氏

PROFILE
1952年、香川県生まれ。大学卒業後、旅行会社勤務を経て、乾麺製造会社で働く。「自分のうどん」を作りたいと、2001年独立して高松市に塩田麺業を開業。国産の小麦粉と足踏み・手打ちにこだわった「塩田うどん」として売り出す。 URL:http://www.shiota-udon.com/

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「塩田うどん」の店先

●添乗員から「うどん屋」へ

現在は「うどん屋」として独立していらっしゃいますが、ここに至るまでの経緯を教えてください。

塩田 大学卒業後、旅行会社に入り添乗員として働きました。しかし、年末年始や行楽シーズンがとても忙しく、世間の人たちが楽しむ時期に家族といっしょに過ごす時間を思うように取ることができない…それで8年ほど勤めて旅行会社を辞めました。その後、製麺業の会社に就職しました。香川県出身の私にすれば、自然の成り行きだったのかもしれません。当時は今のような「讃岐うどんブーム」などはありませんでしたが…。その会社は主として乾麺を作っていたのですが、そこでうどんの作り方を身につけ、また店の立ち上げにもかかわり、営業や接客の方法も覚えました。

その「うどん作り」の修行時代に「大変だ」と思われたことはありましたか。

塩田 やはり生地作りでしょうね。気温や天候によって塩加減、水加減を微妙に変えなければなりませんから…。それを自分で覚えるまではなかなか大変でした。

●自分自身の「うどんへのこだわり」を実現するために独立・開業

次第にご自分の店を持ちたいとの思いが強くなったのですね。

塩田 はい。その会社には20年ほど勤めましたが、自分なりの方法で「自分のうどん」を作りたくなったんですね。その会社では機械を使っていたけれど、「自分のうどん」はやはり足で踏んで生地を作り、手打ちにしたい、そして原料である小麦粉はどうしても国産のものを使いたい、添加物は加えたくない…そんな思いが強くなったのです。「自分のうどん」への思いを断ちがたかったのでしょうね。

国産の小麦、そして足踏みと手打ちへのこだわり…そこには塩田さんのどのような思いがあるのでしょうか。

塩田 そのほうが「おいしい」と思いますし、それをお客様に召し上がっていただきたいのです。国産の小麦粉を使わないと、コシの強さと独特の「モチモチ感」は生まれません。またそれが他の店との差別化につながっているわけです。香川県内には八百店あまりのうどん屋があると言われていますが、原料として国産の小麦粉を使っている店は数えるほどでしょう。
また生地作りを足踏みで行うと、生地の間にうまい具合に空気が入って、独特の「モチモチ感」が生まれ、きれいなうどんができます。機械では均一に重い圧力をかけるため、こうはなりません。

足踏みは相当な重労働ではないかと思うのですが…。また朝も早いのでしょう。

塩田 朝は早ければ4時、遅いときでも5時までには仕事に入ります。2時間あまりの間、交替をしながら足踏みを続けます。機械で行えば十数分で済むのですが…。平日は平均して400玉、土・日・祭日は、およそ700玉のうどんを作ります。たしかに大変ですが、好きで選んだ仕事ですから…。またお客様の「おいしい」の一言を聞けば、大変さなんて吹き飛んでしまいます。

●お客様の「おいしい」が最大のやりがい

お仕事のなかで喜びややりがいを感じるのは、どんなときでしょうか。

塩田 何といってもお客様から「おいしい」とおっしゃっていただいたときですね。また「よそで食べたうどんと違う」との言葉をかけてくださったときも、とても嬉しいです。また一度食べられたお客様が「おいしいから」と口コミで、「塩田うどん」を広めてくださる。ありがたい限りですね。この仕事は、お客様の意見や反応を直に見聞きできます。そのお客様の声の一つひとつが私のうどん作りに対するエネルギーとなって蓄えられていくのです。

インターネットを利用しての販売も手がけていらっしゃいますね。

塩田 この店は、栗林公園に近いせいか、県外からのお客様も大勢いらっしゃいます。さらにできるだけ多くの方々に、そして全国の方々に私のうどんを食べていただきたいと思い、インターネットを通しての販売を始めました。

お仕事のなかでの厳しさはどんなことでしょうか。

塩田 それは他店との競争の激しさとお客様のうどんに対する厳しい目です。この店の半径100メートルくらいに4軒のうどん屋のお店があり、それぞれ大変がんばっていらっしゃいます。また、香川県では一般の方でも自分でうどんを打つことは珍しくありません。それだけにうどんをよく知っていて、厳しい目を持っています。私が手を抜いたらお客様はいっぺんに離れてしまうでしょう。

●できるだけ「いいうどん」を作りたい

最も心がけているのはどんなことでしょうか。

塩田 できるだけ「いいうどん」を作り、お客様においしいく、そして出来たてを召し上がっていただきたいということです。それが私の最大の目標であり、この店を開いてからずっと心に留めていることです。

近頃は会社に勤めていても、独立を考えている方も多くなっています。そのような方々に対しご先輩としてのお立場から、アドバイスをお願いします。

塩田 将来の夢があるならそれを実現できるように勉強し、技術や技能が身につくまでは辛抱したほうがよいのではないでしょうか。中途半端での独立は止めたほうが賢明です。

最近の若者は職業意識が薄く、またいったん仕事に就いても短期間で辞めてしまうと指摘する声もありますが、塩田さんはどのようにお考えですか。

塩田 若い方たちが「自分の仕事」に出会うまである程度の試行錯誤を重ねることは、当然なような気がします。私もこれまで決してうどん作り一筋だったわけではありません。同じ小麦粉を扱うのだからと思って、パン屋で働いたこともある。試行錯誤するうちに「自分のうどん」を作りたいと思い、店を開いたわけです。私は自分がしたい仕事が見つかって幸せだと思っています。

 
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