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調査・研究

介護における男性介護職の諸問題に関する実態調査 研究報告書(2002-2004年度)

【研究会メンバー(所属は当該年度のもの)】

座長 岡村 清子(東京女子大学文理学部助教授)

委員 石井 晴美(作業療法士OT・ケアマネジャー)

委員 西村 秀夫(横浜男性ヘルパー会顧問)

委員 林  廓子(お茶の水女子大学COE客員研究員)

【目 的】

本研究は、介護労働の労働実態や諸問題を明らかにし、男女労働者の労働条件の向上と職場への定着のための社会環境について検討する。その上で、これまで明らかにされなかった男性介護職に焦点をあて、今後の問題点をみる。

1990年代より介護におけるジェンダー問題が顕在化することによって、介護労働のあり方も問われている。従来の女性の職場に男性が参入することによって、これらの労働条件の問題が再度問題となり、職員や利用者の双方にとって、良好な労働環境や労働条件の改善が求められている。一方、男性が定着していくためには、女性とは異なった様々な問題があるが、これらを把握するために、職員の労働条件や職務の適性、職員の人間関係、利用者の意見などを調査する。

【調査の方法】

◆平成14年度(ヒアリング調査のみ)

調査対象者

・首都圏15ヵ所の特別養護老人ホーム及び老人保健施設の責任者15名、同じ施設で働く男性介護職員と女性介護職員それぞれ1名ずつ、合計男性15名、女性15名。

・首都圏16ヵ所のホームヘルプステーションの責任者16名、同じステーションで働く男性ヘルパーまたは女性ヘルパー合計16名

調査実施期間:平成14年10月~平成14年12月

◆平成15年度

(1).郵送調査

○指定標本

東京、茨城、埼玉及び神奈川45施設の特別養護老人ホームの介護職15名(1施設のみ5名)

発送数=664所 回収数=338所 回収率=50.8%

○一般標本

全国入所施設定員50人以上の特別養護老人ホームを都道府県ごとに10ヵ所抽出し、2名の職員に回答を依頼した。

発送数=940所 回収数=378所 回収率=40.2%

調査実施期間:平成15年10月~平成15年12月

(2).ヒアリング調査

調査対象者:首都圏9ヵ所の特別養護老人ホームの入所利用者各4名と、2ヵ所の各7名で、計11ヵ所50名の利用者。

調査実施期間:平成15年11月~平成15年12月

◆平成16年度

(1).郵送調査

○デイサービス介護職員調査

施設利用率が高い、青森県、秋田県、群馬県、神奈川県、新潟県、長野県、滋賀県、和歌山県、島根県、徳島県、大分県、沖縄県の専従(常勤)職員4人以上のデイサービスセンター600事業所を抽出し、各2名の職員に回答を依頼した。

発送数=1,200所 回収数=451所 回収率=37.6%

○ホームヘルパー調査

施設利用率が高い、青森県、秋田県、群馬県、神奈川県、新潟県、長野県、滋賀県、和歌山県、島根県、徳島県、大分県、沖縄県の専従(常勤)職員4人以上のヘルパーステーション590事業所を抽出し、各2名の職員に回答を依頼した。

発送数=1,180所 回収数=372所 回収率=31.5%

調査実施期間:平成16年11月~平成16年12月

(2).ヒアリング調査

○デイサービス利用者

調査対象者:首都圏10ヵ所のデイサービス利用者20名(男性9名、女性11名)。

○ホームヘルパー利用者

調査対象者:首都圏在住のホームヘルパー利用者13名(男性7名、女性6名)。

調査実施期間:平成16年9月~平成16年12月

【調査結果】

1.職場での男性介護職の役割と評価

(1)働く場所による違い

①入所施設と通所施設で働く男性介護職と、訪問介護事業所で働くホームヘルパーとでは、職務内容の違いから男性介護職への期待は異なっている。

②特別養護老人ホームでは、男性介護職が全くいないのは0.5%に過ぎず男性の採用が進んでいる。これは、特別養護老人ホームは、「社会福祉法人」が多数であることや全体の職員人数が多いこと、夜勤があることなどが理由として考えられる。

③施設内での職務においては男性職員と女性職員との共同の仕事として展開される。しかし、利用者の家庭で個別に行われるホームヘルパーの仕事は、男性ヘルパーか女性ヘルパーという二者択一の選択となり、女性利用者は女性ヘルパーを望むという同性介護の考え方と調理、掃除、身の回りの世話などは女性が得意であるというジェンダーによる適職論により、男女利用者が共に女性ヘルパーを望んでいる。

④ホームヘルパ-が個別家庭への訪問をすることに抵抗があり継続的に異性がかかわる場合には問題が生じやすい。高齢単身世帯の男性と女性、高齢夫婦世帯の妻と夫など利用者の家族類型との関連も考慮が必要である。

(2)共通にみられる男性介護職についての職員の評価

①男性の働きぶりが認められ、かけがえのないスタッフとして定着している。

②力仕事やパソコンの利用の事務処理、修理・修繕などの男性の適性と考えられていた仕事への期待が高い。

③女性だけの職場に男性が入ることにより緊張感が生じ、職場環境に良い効果がある。

④男性は、家庭の都合で休むことが少なく、結婚、出産、育児などを理由とした休暇が少ない。

⑤男性介護職の実践は、職場における男性の評価を高め、男性介護職が定着している職場においては、男性の評価が高いことを考慮するならば、今後も男性の仕事として拡大していく可能性は大きい。

(3)利用者の評価

①男性利用者は話が通じるなどの理由で男性介護職に対する受け入れが進んでいるが、女性利用者は職場に男性が入ることを歓迎しているが、身体介護など個々の職務によっては、同性介護を望んでいる。

②現在の利用者は、性別役割分業の考え方により「男は男らしく」「女は女らしく」という性別特性を内面化しているので、その規範に沿った形での男性介護職の評価となっている。これらに反する場合には、「男性なのに優しい」とか「女性なのに力持ち」という一般には否定されがちな特性が、長所として評価されている。

③介護職は従来の性別の役割特性の両面を備えている人が重要な人材であることがわかる。このことは、介護職は、職業的なスキルに加えて、従来からある男性性と女性性の両面を備えた「人間性」や「社会的スキル」などのような性別特性を超えた価値が求められていることを示唆している。