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Vol.1-2

『職業安定広報』2004年5/21号より

キャリアカウンセリングの様々な現場で活躍される方々によるリレーコラム。

あるマッチング

就職・採用アナリスト
キャリアコンサルタント
((財)社会経済生産性本部認定)

斎藤幸江

 新卒で就職情報会社に就職した縁で、学生の職業相談に応じることになった私は、相談歴は長いが、専門知識や理論をきちんと学ぶ機会はほとんどなかった。その危機感と周囲の強い勧めもあって、この春、(財)社会経済生産性本部認定キャリア・コンサルタント資格試験をめざすことになった。必死の受験勉強の甲斐あってか(?)、一次試験に無事合格し、3月上旬に二次の実技試験を迎えた。
 折しも就職活動シーズン。志望動機や就職への意思を固める前に採用活動が始まり、悩む大学3年生からのSOSが私のもとに相次ぐ時期で、受験勉強の傍ら、現実の相談にも極力対処していかなければならない。
 一方で「カウンセリング経験はないものの、若年者の就職支援をしたい」という強い思いを持つ、キャリア・コンサルタントやアドバイザー及び志望者が多いことを知った。
 ならば、である。学生たちと実技試験を目前に控えた二次試験受験者を結びつけてみよう―。こんな発想で「就職相談会」を開催した。若年者の雇用支援は、一般の人々をどんどん巻き込み、社会全体でサポートする環境を作っていくことが重要である。若年者も、さまざまな立場の社会人とコミュニケーションをとることで、将来に向き合う力をつけられるからだ。
 しかし「相談会」と銘打つ以上、学生の期待は高くなるはず。一方で、相談員側は、社会人経験は豊富であるものの、職業相談の現場経験や資格はない。その点は学生、相談員双方に以下の配慮をお願いすることで、対処した。
 学生に伝えた要点は以下の3つである。

  • 相談員は、学生の職業相談の経験こそないが、豊かな社会人経験とカウンセリングの技術や知識をある程度持ち、何より学生の役に立ちたいと望んでいる。
  • 就職活動における面接などで重要なことは、社会人に自分の思いや考えを正しく伝えること。相談を通して、伝わるコミュニケーションのコツを掴んで欲しい。
  • キャリア・コンサルタント資格試験対策の実技実習の場でもあるので、終了後は、相談についての評価シートを記入し、本人に渡すこと。

 最後のポイントには、こんな狙いがある。就職活動の初期に、面接がうまくいかないと、「私の話を聞く気がない」、「見る目がない」、「女子を採る気がない」、「大学差別をしているらしい」などと、とかく担当者への一方的な批判に終始しがちになる。そこで、自分が評価者の立場に立つことで、その難しさや、強い熱意や意欲があっても、相手の期待に応えられないことがあるという現実を学生に実感してもらうのだ。
 一方、相談員側には、昨今の新卒採用の状況についての資料を配付し、学生の就職活動情報の掲示板や就職情報サイトのURLを伝え、相談前に現状を知ってもらうようお願いした。
 狙いは当たり、結果は上々。学生からは役立つアドバイスや示唆を得たというだけではなく、一生懸命相談に乗ってくれた方にキツイ評価をする辛さや自分を伝える難しさがわかったとのコメントが寄せられた。相談員は、本物の相談を通じて多くを得たとのことで、その後も継続的に学生と相談を続ける方も出てきた。
 幸い、受験者のほとんどが二次試験に合格して資格を取得でき、もう一方の学生も、果敢に就職活動を継続中だ。同様の機会をどう拡大していくかが今後の課題。ご意見やアイデアがあれば、ぜひお聞かせください。
(E-mail : job_analyst-lj@infoseek.jp)