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Vol.13-1

『職業安定広報』2008年4月号より

キャリアカウンセリングの様々な現場で活躍される方々によるリレーコラム。

キャリアカウンセリングにアセスメントツールを活用してみませんか

山本公子氏 画像

こころとキャリアのカウンセリングオフィス 結(ゆう)
代表

山本公子

プロローグ

 私は現在、こころとキャリアの専門家として、若者から中高年まで、また個人と組織の双方を対象に活動しています。キャリアカウンセリングでは、主人公である来談者が、その人らしく、自律的に職業人生(キャリア)を歩めるように、手助けをしていきます。
 私のキャリアの出発点は旧労働省です。ハローワークも短期間経験しました。その後大阪府に転じ、長く携わったのが、職業カウンセリングセンターでの『職業適性相談』でした。そこはまさにキャリアカウンセリングの現場で、中学生から中高年まで多くの方が相談に来られます。そこで相談の1つのツールとして、職業適性検査を活用するようになりました。

ある来談者の例

 ここで、印象に残った事例をご紹介しましょう。母子家庭のお母さんからの相談で、学歴は高校中退でした。製造、掃除等、これまでの職歴を活かせる仕事を探していましたが、本来それほどやりたい仕事ではなかったそうで、あまり意欲がみられませんでした。
 そこで適性検査を受けてもらうと、案外事務の能力が高いことがわかりました。新たな分野への可能性が開けたためか、ご本人に意欲的な取り組みがみられるようになりました。その後パソコン講座を受け、時間はかかりましたが事務職で就職することができ、うまくいっているとのことです。
 この例は、学歴や職歴に基づいた仕事の探し方しかできなかった人が、適性検査を受けることにより、自分でも気付かなかった適性がわかり、可能性が開花した例です。適性検査などのアセスメントツールを使うことによって、既成の発想を超えた支援ができた例は少なくありません。
 そこで、これから4回にわたって、適性検査についていろいろな話題を紹介していきます。

職業適性と自己理解

 職業は人生の幸せにも関わります。おそらくどなたでも、職業や進路を選ぶときには、自分に合っているか、適応できそうかといった、広い意味の「適性」を考えるでしょう。
 キャリアカウンセリングは一般に、適性の把握、職務の棚卸しといった「自己理解」から始まります。その内容は、1人ずつ違いますが、およそ次のような面を見ていきます。

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 囲み箇所のうち下線部分についてはアセスメントツールがあります。具体的には能力適性検査、職業興味検査、性格検査、価値観チェックリストなどです。
 キャリアカウンセリングの中で適性検査を上手に用いると、客観的な自己理解が深まり、方向性が示されて意欲が高まります。そして今回の事例で紹介したような様々な効果が得られます。しかし適性検査には限界もあります。効果を上げるためには、あくまでも結果を過信することなく、適切な分析等を行いつつ活用することが必要といえます。

 次回から、主な適性検査を紹介しながら、相談でどのように使っていくのか、注意するポイント等を、事例を交えつつお伝えしていきたいと思います。