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Vol.13-2

『職業安定広報』2008年5月号より

キャリアカウンセリングの様々な現場で活躍される方々によるリレーコラム。

好きこそものの上手なれ~興味から始まるキャリアカウンセリング~

山本公子氏 画像

こころとキャリアのカウンセリングオフィス 結(ゆう)
代表

山本公子

職業興味の発達

 大学のキャリアデザインセミナーで、学生達に小さい頃憧れた職業を尋ねると、花屋、ケーキ屋、先生、スポーツ選手、宇宙飛行士等がよくあがります。身近な人の職業や、テレビの流行等、環境の影響を受けやすいことがわかります。
 子どもの頃の夢は、成長と共に、体験や知識、能力の吟味といった条件を組み込んでつむぎ直され、現実的な職業興味へと発達していきます。
 興味は人を引きつけ、動機付け、価値観を形成していきます。追い求めすぎると現実離れをしますが、義務感や経済観念だけでは満足できないのも事実です。それは大人になっても同様で、収入よりも、『好きであること』や『やりがい』を職業に求める場合もあります。

人と職業の6タイプ

 人は独自の素質や特性を持って生まれ、自分を取り巻く環境との交流を通じて、職業意識が育まれます。キャリア心理学者のホランドは、人と環境を6タイプに分け、人は自分のタイプと同じ性質の環境(職業)を求め、そこで最も力を発揮することを見いだしました。
 6タイプの職業領域とは、「現実的、研究的、芸術的、社会的、企業的、慣習的」職業領域です。この考えを元にしたのが、大学生向け「VPI職業興味検査」(注1)、中学・高校生向け「職業レディネス・テスト(VRT)」(注2)です。学校や若者支援機関等で利用されており、相談の最初の導入に適しています。短時間で実施でき、ワークシートを利用したり、職業情報を調べることで、自己理解と職業理解を深めることができます。

運動が好きなA君

 A君は勉強は嫌いでしたが、運動は好きだったといいます。頭より身体を使う仕事を好み、中学卒業後、土木現場などを転々として、将来のことはあまり考えていませんでした。前述のVRTをしてもらうと、物作り(現実的職業領域)や経営(企業的職業領域)、人と関わる活動(社会的職業領域)への興味が強いことがわかりました。さらに職業ハンドブックOHBY(オービィ)(注3)を見てもらうと、建設関係の大工、とび、左官などに興味を持ち、仕事の内容やその職業に就くための方法を熱心に見ていました。A君に、公立の高等技術専門校に行く方法もあることを伝えると、ぱっと明るい表情になりました。将来建設関係で独立したいという希望も言葉にしました。
 A君は自分自身の職業興味に気づいて目標が鮮明になり、はじめて頑張ってみようという気持ちになったのでした。

職業興味は発達し変化する

 興味はその人の活動や職業生活と共に発達し、変化していきます。例えば、事務職から人事相談の仕事をするようになったBさんは、事務的(慣習的)な興味が薄れて、社会的・芸術的興味が高くなりました。技術職から管理職になって、現実的興味から、企業的・社会的興味へと変化する人もいます。このように興味は、その時々の状況や気持ちを反映しています。また、興味だけで適性が決まるわけでもありません。
 そこで、次回は能力面について取り上げます。

  1. ○注1、注2:「VPI職業興味検査」[第3版]「職業レディネス・テスト」[第3版]社団法人雇用問題研究会
  2. ○注3:労働政策研究・研修機構 http://ohby.hrsys.net/
  3. ○ウェブでできる興味検査等の例
  4. ・労働政策研究・研修機構「キャリアマトリックス」http://cmx.vrsys.net/(約500職種の仕事内容を写真とともに解説。興味、ワークスタイル(価値観)、スキルによる適職探索等も可能)
  5. ・大阪府総合労働事務所職業カウンセリングセンターのホームページ(MIO職業興味チェックリスト、若年向けPrep-Y職業興味検査の利用が可能)http://www.pref.osaka.jp/sogorodo/counseling/