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Vol.13-3

『職業安定広報』2008年6月号より

キャリアカウンセリングの様々な現場で活躍される方々によるリレーコラム。

私の得意・不得意を知りたい

山本公子氏 画像

こころとキャリアのカウンセリングオフィス 結(ゆう)
代表

山本公子

 適性検査は、キャリアカウンセリングと同じ約1世紀の歴史があります。そのうち能力適性検査は、比較的早くから研究が進み、キャリアカウンセリング、事業所の採用配置、能力開発等、幅広く活用されています。 今回は、基礎的な能力を見る適性検査の1つであるGATB(注)を活用したキャリアカウンセリングについてご紹介します。

GATBの9適性能の概略

(注:F、Mは器具検査、その他はペーパーテストで検査)
【認知機能群】(G知的能力、V言語能力、N数理能力、Q書記的知覚)
 :言葉、数字などで表現された物事を理解する働き、抽象的・論理的思考
【知覚機能群】(S空間判断力、P形態知覚)
 :図面や構造など図や形・イメージを理解する働き
【運動機能群】(K運動共応、F指先の器用さ、M手腕の器用さ)
 :指や手腕を動かして、物をすばやく正確に取り扱う働き

職業や能力開発の方向性を探る

 GATBは、職業経験の少ない若年者の進路や職業の方向性を探るときによく使われます。
 その際、可能性を引き出すように、また、わかりやすくフィードバックすることが大切です。結果のプロフィールや職業分類票を示し、感想を聞きながら、自己理解や職業理解が深まるようにカウンセリングを進めます。得意や強みを生かすことを基本として、不得意分野を知ることも必要です。
 職種転換などで、中高年齢者にも利用しますが、一般に加齢と共に作業スピードが遅くなり、適性能によっては早く低下するので、解釈には注意が必要です。
 30代半ばのC子さんは、印刷会社で、美術冊子の印刷物の点検をする仕事をしていました。退職後、生かせる職場が見つからず、相談では、能力開発訓練を希望したものの、どのコースを選ぶか迷っていました。
 GATBを受けてもらうと、形態知覚(P)に大変優れ、他の適性もほぼ平均以上ありました。一方、記号記入などが遅く、運動共応(K)が苦手なことがわかりました。C子さんは「色や形の微妙なチェックが前の仕事で必要でした。自分のいい面をアピールできそうです」と、美術への興味から、Webデザインへの応募を目標とすることになりました。 能力適性と進路や職業への適応  能力適性は、学力や職業能力そのものではなく、適応には多くの要因が関係するので、過大な解釈は禁物です。しかし、適性を考慮せず不得意分野に進学したために、学習が進まず、意欲も低下して、不適応に陥った例があります。また、適性に合わない仕事への異動をきっかけに、心の病になったという例もあります。

 以上のように、GATBは奥深い使い方ができるので、よく理解した上で、うまく活用していただきたいツールの1つです。
 次回は、ミッドキャリア層のアセスメントについて、取り上げます。

○注:「GATB:厚生労働省編一般職業適性検査」
 (General Aptitude Test Battery)
http://www.jil.go.jp/institute/seika/GATB.htm
○参考文献: 「キャリアデザイン概論」本間・金屋・山本共著(社団法人 雇用問題研究会) 第3章第5節