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Vol.13-4

『職業安定広報』2008年7月号より

キャリアカウンセリングの様々な現場で活躍される方々によるリレーコラム。

ミッド・キャリア層へのキャリアカウンセリング

山本公子氏 画像

こころとキャリアのカウンセリングオフィス 結(ゆう)
代表

山本公子

ミッド・キャリア層の相談ニーズ

 最終回は、ミッド・キャリア層といわれる35歳から65歳位の方々への相談についてです。ある調査によれば、ミッド・キャリア層は再就職に当たり、「職業理解、自己理解(適性理解)、企業研究(下調べ)、面接・履歴書」を重視しており、これらは若者と共通だったとのことです。しかしながら、人生経験も職業経験も豊富なミッド・キャリア層への支援には、若者と違う視点も必要です。

「キャリア・インサイトMC(ミッド・キャリア)」の活用  

 「キャリア・インサイトMC(注参照、以下「MC」という)」は、35歳以上の職業経験のある求職者の方を対象としたキャリア・ガイダンスシステムです。MCの特徴は、利用者自身がパソコンを使いながら、「適性診断、職業情報の検索、適性と職業情報の照合、キャリアプランニング」を行うことです。そのプロセスを経ることで、キャリア形成の一連の流れをバランスよく体験し、自己理解が進むように工夫されています。
 キャリアカウンセリングには、悩みやストレスを抱えた方、前職がうまくいかなかった方も来られます。MCを活用すれば、職業生活への構えや適応をある程度推測できるので、リスクを避けつつ、より適性があり満足できる働き方を探ることができます。
  MCを実施していただく際には、カウンセラーがクライエントの入力状況を見守り、時折言葉をかけることも内省に役立ちます。また、結果は両者の間で共有して、何を読み取り、どう生かすかを話し合っていきます。
注:「キャリア・インサイトMC」
 独立行政法人労働政策研究・研修機構 http://www.jil.go.jp/institute/seika/midcareer/index.html

人生の午後の転機(Dさんの場合)

 「45歳にしてセカンドキャリア」を目指して、大手メーカーを退職するに至ったDさんは、その胸の内を語ってくださいました。
 「45歳という『人生の午後』、残り時間への焦りもあり、『自分にとって意味のあることをやりたい』と思いました。家族を養う責任から、今の企業での『ポジション』と『安定した収入』を手放すことには、勇気が要りました。幸い仕事が一段落したこと、会社の転職支援制度を利用できたことと、何よりも家族が応援してくれたことが後押しになりました」 MCに1時間ほど取り組んでいただいた後、Dさんの行動特性をみると、ストレスや変化に強く、冷静に対処でき、大きな決断をする覚悟や準備を示していました。また希望する職場イメージは、管理的でない自由な専門的職場でした。Dさんは、MCを通して、ものづくりから、働く人の深い心の相談にかかわりたいという思いが強くなったようです。

エピローグ

 Dさんは、MCを受けた体験を通して「キャリアを見直し、考えることで十分に納得した人生を作り上げていくこと、そして後悔や不安を感じて過去や未来を生きるのではなく『いま』を生きることが大事だと思う」と述べられました。
 ミッド・キャリア層に限らず、人は自分の人生を「意味のある物語」に創りあげていくことが大切ではないでしょうか。そんな人間観をもって、キャリアカウンセリングに臨みたいと思います。MCはそれを手助けしてくれるツールのひとつです。
 アセスメントツールは、カウンセリングと合わせて、車の両輪になった時に効果を発揮します。また、使い込むほどに深まります。相談に役立てていただけたら幸いです。