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Vol.17-4

『職業研究』2010年冬季号より

キャリアカウンセリングの様々な現場で活躍される方々によるリレーコラム。

仕事に対する“意識”を高める(高校生編)②

栗田 稔氏 画像

ハローワーク、定時制高校 
就職支援相談員
(2級キャリア・コンサルティング技能士)

栗田 稔

 定時制高校は4年制のため、企業への応募は4年生の9月から始まりますが、遅くとも3年生の終了時には就職か進学かを決めておく必要があります。4年生になってから就職や進学をしたいと言っても、入学金や欠席日数などで手遅れになるからです。特に問題になるのは、欠席日数の多さです。前回記したように、定時制の生徒は、家庭や環境など様々な問題を抱えていて、中には昼間週6日アルバイトをしている生徒もいて、仕事疲れで学校を休むことが多くなってしまいます。

 私の担当する定時制高校では、3年生の10月頃からキャリア支援を開始するため、早めに進路の目標設定ができるので、学校を休まず出席する努力や、親と相談して、入学のために貯金をするなどの対策を行うことができます。また、本人の気持ちと親の希望が一致しないケースもありますが、早くからサポートを行うことで、本人・親・担任教師の認識が共有化され、学校で行われる三者面談で意思統一ができるため、目標に向けての行動も早くから起こすことができます。高校生の場合、親の協力と理解が一番重要となります。
 問題は、就職希望の生徒達です。本人の希望と定時制に来る求人に大きな開きがあるからです。いままで、定時制生徒の就職先は、パチンコ・カラオケ・飲食など少数の業界・職種に限られていました。これは定時制に来る求人がこれらの業界・職種に限られていたからです。これではアルバイト先と同じです。せっかく、本人達が興味のある業界や職種、給与や将来性など詳細な説明を3年生の時からして、生徒もやる気になっているのに、いざ就職活動をしようとしても、このような状況では、定時制の生徒は夢も希望もなくしてしまいます。別にこれらの仕事が悪いわけではなく、明確な目標(将来自分の店を持つなど)があれば全く問題はありませんが、そうでない場合は、定時制の生徒には最初から職業を選ぶ選択肢がありません。

 そこで私は、全日制に来る求人票から生徒達に希望する企業を選んでもらい、会社見学も見学時に見落としがないように、独自に作成したチェックシートを持って行き、仕事に必要な要点を確認していきました。生徒達も自分が働くイメージがだんだんでき上がり、自分から仕事内容について企業の担当者に質問をするなど積極的な行動を起こし、採用担当者に顔を覚えてもらえたことで、本番の面接時にもよい印象を与えることができました。
 進学組も就職組も、希望先が決まったら、そこに合わせた面接や試験対策をしていかなければなりません。試験では、全日制の生徒がライバルになるわけですから、定時制の生徒の利点をアピールしない限り、成績や欠席日数などで負けてしまいます。幸い企業で採用も担当していた立場から、就職希望の生徒には、どこをアピールしていけば企業側から評価を得られるか、ポイントを絞った指導を行いました。また、早めに準備をしていたことで、進学や就職に対して高い"意識"を持っているため採用側に入学・就職への意欲が伝わり、欠席日数の多さをカバーすることもできました。
 当然、不採用の連絡も入ります。本人は頑張っただけに相当ショックを受けますので、励まし、慰めながら次の応募先を探していきますが、まだ年齢的に若く繊細なので、傷つけないよう細心の注意を払いながら進めないと、この時点で投げ出してしまいます。高校生を支援する場合、この時点でのサポートが一番難しいかもしれません。とにかく本人にあきらめの気持ちを持たせないことです。

 おかげさまで、今年度も進学・就職希望者は、ほぼ全員入学・就職が決まりました。また、嬉しいことにフリーターでもよいと言っていた生徒達も、就職や進学を希望し始めたため、卒業までに全員進路が決まるよう支援を続けていく予定です。
 今後は「教育現場」「企業」と「家庭」が今以上に協力し合って、個々のキャリア育成をしていく必要があると感じています。それらの橋渡しとしてキャリアコンサルタントが力になれればと考えています。