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Vol.18-4

『職業研究』2012年冬季号より

キャリアカウンセリングの様々な現場で活躍される方々によるリレーコラム。

就活で内定が取れずもがく~リフレーミングで強みに気づく~

伊東眞行氏 画像

ライフデザイン・カウンセリングルーム
(臨床心理士、2級キャリアコンサルティング技能士)

伊東眞行

不採用が続いて

 キャリア相談室を訪ねてきたDさんは文系学部4回生女子。「就活をし始めたころは緊張感がありましたが、20社不採用になり、最近は惰性で企業回りをしているだけのような気分です。自分は何の取り柄もないだめな人間だと思えて…」と泣きそうな表情で話します。
 Dさんはコンビニ店でレジのアルバイトをしてきました。決められたことはこつこつとこなせるのですが、接客は苦手とのこと。このような性格を変えたいと思い、人材ビジネスやブライダル関係を多数まわったものの、いずれも不採用でした。Dさんは「何をやりたいのか、だんだんわからなくなってきました」と辛そうです。そこで、「自分のやりたいことや強みを見つけ出すために、職業興味検査や性格検査を受けてみては」と提案し、了解を得ました。

アセスメントを受ける

 職業興味検査では、事務分野への興味が強く、対人分野への興味はかなり低く出ていました。また性格検査ではこつこつ取り組み、じっくり考える傾向が強く、創造性や対人面での親和性は大変低い傾向が見られました。
 Dさんに検査結果の特徴を説明したところ、「自分の性格を変えたいと思い、無理をしてきました。結果は正直な自分を表しているように思います」「事務が自分には合っているようなので、今後は一般職を受けようと思います」との感想でした。

模擬面接を体験

 その後、Dさんは一般職で応募しましたが、やはり面接が通りません。そこで模擬面接をしてみると、面接慣れしているためか、質問にはすらすらと答えることができるのですが、パターン的で、気持ちがこもらず不自然さが目立ちました。Dさんは「自己PRで、本当の自分を出すと採用されないような気がします。だから明るく元気な性格を演じてしまいます」と話します。
 Dさんに、自己イメージを調べるチェックリストで「現実の自分」と「理想の自分」を評価してもらいました。すると、「現実の自分」は極端にマイナスイメージが強く、「理想の自分」は極端なプラスイメージをもっていました。このギャップの大きさが、Dさんを苦しめているようでした。

リフレーミングで自分の長所に気づく

 Dさんの自己否定意識があまりに強いので、リフレーミング(Reframing)をしてみることにしました。フレームは「枠組み」、リフレーミングは「枠組みを変える」「違った視点から見る」という意味があり、発想を転換して短所の裏にある長所に気づいたり、プラス思考でものを見ていくような技法です。
 Dさんは「劣等感の強い」を「向上心のある」に、「柔軟性の乏しい」を「信念の強い」に、「消極的な」を「謙虚な」に置き換えました。このようにしてみつけた「向上心のある、信念の強い、謙虚な」自分を意識し、自分の強みだと思って面接に臨むようアドバイスしました。Dさんは、何かハッと気づくものがあったようでした。

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その後…

 数週間の後、Dさんが「内定がとれました!」と明るい表情で来所しました。「これまでは、本当の自分を出してはいけない、という思いばかりが強く、身構えて面接を受けていました。今回は不思議に、自然体の自分で話すことができました」と報告してくれました。
 リフレーミングによって自分の持ち味に気づき、自己肯定感を高められたことが、Dさんにとって大きな転機になったようです。