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Vol.19-4

『職業研究』2013年冬季号より

キャリアカウンセリングの様々な現場で活躍される方々によるリレーコラム。

支援職だって悩んでる

藤掛弘美氏 画像

(株)セーフティネット・マネージャー
人材紹介会社・スーパーバイザー
産業カウンセラー

藤掛弘美

 今までは、3つの「A」安全、安心、諦めずに支援を行うについて事例を交えながらお話をさせていただきました。最終回では支援する側のメンタルヘルスについて、お話をさせていただきたいと思います。

 日頃、相談室でご相談をいただく方の中には、女性センターのカウンセラー、PSW(精神保健福祉士)、キャリアカウンセラー、看護師、企業内保健師など、支援をお仕事になさっている方が多くおられます。
 夫の暴力から逃げてきた女性を警察や病院、関係機関と連携を取り、苦労を重ねて安全を図り、ホッとしたのも束の間、呆気なく夫の元に戻られてしまい、がっかり感だけが残ったケース。
 医務室へ駆け込んできた社員に対し、症状の辛さに親身に耳を傾け、病院探しから受診継続のサポート、人事と連携しての休職手続き、職場復帰まで支援したけれど、その社員からの度重なるメールや頻繁にかかる電話にほとほと疲れ果て、自身に不調が起きてしまったケース。

 就職支援の依頼を受け、二人三脚で支援を開始したものの、対応について「不足だ」と利用者から不平不満の怒りを毎回ぶつけられ、ある時はペットボトルを投げつけられたり、大声を出されたりが重なり、とうとう出社ができなくなってしまったケース。
 どなたも皆、親切で一生懸命さが伝わり、同じ支援職をさせていただいている私もお聞きしていて胸が痛みました。
 私も相談室で同じように怒りの感情をぶつけられ、疲労感に襲われたり、無力感に打ちのめされたり、期待を裏切られたりの連続です。そのような時に何をヒントに、何を杖に相談をお受けしたらいいのか、常に自身に問いかけてきました。
 今だこうしてご相談をお受けするモチベーションを継続していられるのは、多くの先輩方や先生方のご指導や知恵をいただいたからにほかなりません。私を助けてくれた方法を少しお話しさせていただきますと、

  1. 自分の癖を知り、自己理解を深めるために、進んでスーパーバイズを受ける。
  2. 病理や障がいについての知識や怒りや依存、不安、発達など基礎的な心理学の理解を深め、適切な見立てを行うよう努力する。
  3. 立てた見立てが適切であるか、独り善がりになってはいないかを常に問いかけ、精神科医とのケースカンファレンス、心理士との事例検討など客観性を保つ。
  4. 連携がとれる範囲の中で、関係機関など周囲の力を利用する。
  5. ピアカウンセリングを行い、振り返りを行いながら自身のストレスを軽減する。
  6. より多くの事例に触れられるよう、進んで勉強会などに参加する。
  7. 稼働日以外の日は、気分転換を図り、心に栄養を与えるべく楽しい時間を過ごせるよう心がける(自然に触れるウォーキング、美しいものを観る美術館巡り、友との語らい、美味しい食事など)。

などでしょうか…。
 発達の理論を学んだことで、不思議だったCL(クライアント)の状況が理解できたこともありました。また、心理を学ぶことで怒りを発散するCLの言葉に対して、過度な傷つきを受けずに耐えられたこともありました。また、精神科医の一言で、全てが腑に落ちたこともあります。先輩方との対話の中で、自分の語彙の足りなさを感じたことも多々ありました。
 よい友に恵まれ、よい指導者に恵まれてここまでやってこられました。仲間がいなくては感情職や支援職は務まらないと感じています。
 支援職をなさっている皆様が、よりベターな方法を見つけられ、より良い支援に繋がりますよう祈念しております。