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Vol.21-3

『職業研究』2015年春季号より

キャリアカウンセリングの様々な現場で活躍される方々によるリレーコラム。

キャリアカウンセリングのポイント③「障害のある方のキャリア形成について」

小中理江氏 画像

株式会社LITALICO
就労支援事業部研修センター
CDA(キャリアデベロップメントアドバイザー)

小中理江

 3回目は、「障害のある方のキャリア形成」についてお話をさせていただきます。まずはアンケート調査の一部をご紹介させていただきます(図表1)。

■図表1
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 ここで、二つのプログラムをご紹介させていただきます。一つ目は、「自分らしく働くとは?」「自分らしく働くうえでの障害」「自分らしく働き続けるために大切なこと」という三つのテーマでグループディスカッションをし、最後に「自分にとって『自分らしく働く』とはどういうことか」を考えるプログラムです。
 さまざまな回答がありましたが、特に「体調の安定」に関する項目をあげた方が多かったです。また仕事に対する優先順位を確認するだけでなく、再度自分の生き方を見直す機会となった方もいました。一つ記憶に残っている事例として、他者に対する否定的思考が引き金になり、最終的にご自身がストレスを抱えて体調を崩す方(うつ病)がいましたが、プログラムを通じて人にはそれぞれ固有の価値観があり、自分が判断している基準とは別の基準で物事を見ていること、自分らしく働くためには「他者の視点や価値観を理解する必要がある」と感じたそうです。
 もう一つはハンセンの「4L( 労働、愛、学習、余暇)」の考え方をベースに、人生を仕事以外の面からも考えてみるプログラムで、「望ましい状態」を考え、「そのためにできそうなこと」をスモールステップの視点から考えてもらいました(図表2)。

 アンケートの結果、「就職をすることで人生への満足度が高まった方が多い」ことがわかりますが、反面、待遇面含め「キャリアパスを描けない」等、「現状」には満足しつつも「将来」に対する不安を抱えていることが推察できます。
 障害のある方の就労支援では「就職をすること」自体に障害を感じておられる方が多く、まずは企業側の理解や配慮を得ながら就労への道を模索していきますが、その際に「いかに働き続けることができるか」を考えながらサポートすることを心掛けています。それは①のアンケート結果からもわかる通り、「仕事」という形で社会参加をすることで、最終的には人生そのものへの満足度向上へ繋がる可能性が高いためです。
 そして今新たに着目しているのは、アンケート②、③に関連するテーマです。これは社会や企業側の理解や協力も必要ですが、すぐにできることとして「当事者の方々のキャリア形成に関する支援」があるのではないでしょうか。

■図表2
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 例えば今すぐに自分のやりたい仕事や希望する条件での就職が難しい人も、「学習」の時間を活用して長期的に実現する方法や「余暇活動」の中で取り組めることに気づいたり、「自分にとっての最適な4Lのバランス」について見直す機会となりました。

 グループワークの利点ですが、障害のある方の中には対人コミュニケーションで独特の難しさを抱える方も多いため、「グループ」という場を通してさまざまな価値観に触れる中で、自然と自身の考え方が変化していくケースがあります。そのような方々に対す るアプローチ方法としても活用できるのではないでしょうか。