メインコンテンツへスキップ

Vol.21-4

『職業研究』2015年夏季号より

キャリアカウンセリングの様々な現場で活躍される方々によるリレーコラム。

キャリアカウンセリングのポイント④「これからの障害者就労支援について」

小中理江氏 画像

株式会社LITALICO
就労支援事業部研修センター
CDA(キャリアデベロップメントアドバイザー)

小中理江

 第1回~第3回までは、まだ試行錯誤の段階ではありますが、個別の事例を挙げながらお伝えをさせていただきました。最終回では、「これからの障害者就労支援」というテーマでお話をさせていただきたいと思います。
 従来の支援では、ご本人のできることを見つけて伸ばし、同時に企業側の配慮も整えてもらいながら、長く働けるような環境構築をするのが主流でしたが、これからはより新しい形での就労も増えていくのではないかと考えています。

「多様性×経済性」

 第3回でも少し触れましたが、障害者求人の給与水準は決して高いとはいえませんし、雇用形態も非正規社員の求人が多いです。しかしご本人の特性( 障害特性を含む)を「強み」として活かしながら経済性も同時に成り立つような仕事も、少しずつですが事例が増えてきました。
 例えば「得意」なことに特化する仕事(エンジニアやコンサルタント等)、趣味を活かしたり興味がある分野の知識を活かせる仕事(アニメの知識、音楽の知識等)などは、イメージがしやすいのではないでしょうか。
 人の幸せや満足の形はさまざまなので、必ずしも「強み」や「興味」を活かさなければならないということではありませんが、活かすことで人生への満足度や自己肯定感が高まる人もいると感じています。
 今後についてですが、障害者雇用の水準を上げるための働きかけを「社会」に対して行うと同時に、「個人」に対しては、よりその方の生きる喜びに繋がるような就労の可能性を模索していきたいと思っています。

多様な人々が共存する社会へ

 平成25年度のハローワークを通じた障害者の就職件数は、過去最高の77,883件(前年度比14%増)となったこと(図参照)、障害者の雇用促進に関する法律の改正により、障害者に対する差別の禁止や合理的配慮が義務化されること、平成30年からは精神障害者が法定雇用率の算定基礎に加えられ、現在の2.0%から段階的に引き上げられることもあり、「障害者雇用」という視点で考えると、社会の受け皿はさらに拡がっていきます。これは、「多様な人々を受け入れる」社会を促進する仕組みとして素晴らしいものではありますが、あくまでも法制度や福祉制度の仕組みを活用しながら雇用を創出している状態ともいえます。

■図 ハローワークにおける障害者の職業紹介状況
image-3

 では、これからどんな社会を目指していけばよいのでしょうか。
 私が働いている株式会社LITALICOでは、「障害のない社会をつくる」という言葉をビジョンに掲げており、「障害は人にあるのではなく社会の中にある」と考え、その障壁をなくしていくことで、多様な人々が生きやすい社会ができるのではないかと考えています。
 皆さんは、社会の中にどんな障害が存在すると思いますか? 私が現在携わっている仕事は「障害のある方への就労支援」ですが、範囲を拡げ、社会にある障害が一つでもなくなるように「社会」「人」の双方に働きかけ続けることが大切だと考えています。そしてその結果、多様な人々がそれぞれの形で社会ネットワークの一翼を担う等、社会参加をしたり貢献していくことで、「多様な人々が共存する社会」へ少し近づくのではないでしょうか。読者の皆さまも、できる範囲でこの活動に参画していただけると嬉しいです。

最後に

 「多様な人々が共存する社会」というのは、多くの人たちが望むことだと思いますが、「私自身がそのような日々を送れているだろうか」と考えることがあります。家族や身近な人とはどうだろうか、同僚とはどうだろうか、自分自身に対してどこまで誠実に生きているだろうか。
 まずは私自身が、日常で生じるさまざまな関わりの中で目指す生き方を体現できるよう、日々を大切にし、取り組んでいきたいと思います。
 1年間このような貴重な場で記事を書く機会をいただけたこと、感謝をしております。有難うございました。