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Vol.24-1

『職業研究』2018年No.1より

キャリアカウンセリングの様々な現場で活躍される方々によるリレーコラム。

若年者を「一人にしない」ために (1)意欲はあるが、就活を始められない学生への支援

北山四郎氏 画像

国家資格 キャリアコンサルタント
2級キャリアコンサルティング技能士

北山四郎

 現在、私は大学のキャリア支援課で学生の方々に就職支援を行っていますが、学生の相談を大別すると、二つの傾向があると感じています。一つは、精神的な部分を課題とする相談、もう一方は、ノウハウ、テクニック的な相談です。
 そこで、本コーナーでは、代表的な質問を例として、日頃私が行っている支援のスタンスをお話しし、同じように若者支援を行っている方の参考になればと考えます。
 「何がやりたいかわからない」「何をどうしたらよいかわからない」
 ポイントは、就労意欲がある場合とそうでない場合で、今回は就労意欲がある場合にスポットを当てます。

  1. 相談者の特徴
    ・情報不足で職業イメージがわかない。しかも「やりたいこと」を見つけてからでないと就職活動ができないと考えている。
  2. このような学生への対応
    ・じっくり話を聴き、焦る気持ちを受け止め、動けない理由を明確にすることが肝要です。
    ・具体的には、「世の中にはたくさんの仕事がある」と情報提供を行いながら、「適職は一つではない」「やってみないとわからない」というメッセージを伝え、まずは「知る」ことを支援します。

 このような事例で大切にしているのは、活動へのきっかけ作りです。私は、「就職活動は何から始めてもよい」と日頃学生に話をしています。やるべきことは、①世の中を知る(業界・企業・職種研究)、②自分を知る(自己分析・学業やアルバイト等を通して、自分の持ち味を知る)、③伝え方を練習する(自分が企業で活躍できることを伝える面接練習)です。

 一方、こんな質問を投げかけます。「では、絶対にやりたくないことはありますか」という質問です。実はこの質問には、不思議なことに多くの学生から「……だけはやりたくない」と回答が返ってきます。実は、それなりに仕事観は持っているというのが見えてきます。大切なのは、次の行動への意識付けで、このような時、私は動機付けツールを活用します。これらに類するものは、ネット上でも各種のアセスメントがあります。私は、VRT(注)をよく参考ツールとして活用しますが、この検査の良いところは、自身で採点ができ、それによる気づきが、動機付けの後押しとなっている点です。出てきた答えで、ホランドのRIASECの形やD(Data:情報)・P(People:人)・T(Thing:物)に対する関心度がわかります。
 私が過去に支援した学生で、就職先との検証をすると、S(社会的領域)やP志向の強い人は、営業系や販売系の仕事に多く就いており、職業興味理解に少なからず役立っているようです。
 結果はどうあれ、少しでも方向性が見えてくれば、「関連ある職業から企業を見てみましょう」と学生を促します。そして、必ずこう伝えます。「まずは、やってみよう。一緒に就職活動をしていこう」と。大切なのは「学生を一人にしない」気持ちだと確信しています。

 次回は、コミュニケーションが苦手、情報過多編と就労意欲がない場合の対応をご紹介したいと思います。

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(注)VRT:職業レディネス・テスト。職業に対する興味・関心及び職務遂行の自信度について測定する検査。