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Vol.25-1

『職業研究』2019年No.2より

キャリアカウンセリングの様々な現場で活躍される方々によるリレーコラム。

好きを仕事にすること

佐藤寿子氏 画像

2級キャリアコンサルティング技能士
国家資格キャリアコンサルタント

佐藤寿子

 私は一般企業を経て教育機関でキャリア支援を始め、現在は専門学校のキャリアセンターに在籍しています。社会との橋渡しを末席ながら関わらせていただくことは、やりがいが多い反面、スムーズに社会へ移行するために何ができるか考えながら日々、試行錯誤しています。

「好きを仕事にすること」と言っても…

 好きなことは、強みであると同時に弱みになることもあると感じています。大切なもので勝負するため挫折を経験することがあるからです。アイデンティティと結びつきが強いため、途中で現実逃避してしまう学生もいます。ここからが大切です。
 「働く」を考えること、自らの適性や能力を見つめること。自己都合ではなく、企業側や利用者の立場に立って考えること。そして、なぜデザインや写真といった専門分野、クリエイティブ業界を志望するのか。これらを踏まえた上で、自分の良さをどう生かして社会に貢献できるか一緒に考えていきます。加えて、入学の経緯なども聞き、自分の選択で歩んできたことに気づきを促します。

クリエイティブ専門職の就職活動とは

 履歴書など応募書類に加え、ポートフォリオが必須です。クリエイティブ業界へのパスポートであり、自ら能力や意欲を入れてアピールする作品集です。企業は3分程度で判断します。ただ、思うままに作るだけでは通りません。学校課題だけでなく、志望先に合わせた作品や自主制作などを入れて工夫を凝らすことが重要です。これが、クリエイターとして働くチャンスにつながることになります。

Aさんの場合

 今春に卒業したAさんはゲーム業界への志望が高い学生でした。目指す姿を実現するために、入学後すぐにインターンシップに参加するなど意欲的でしたが、ポートフォリオ制作に苦戦していました。応募先である企業からの辛口アドバイスで、自信を失うこともありました。そんな彼女に私はいつでも話に来られる雰囲気や安心して話せる場作りを心掛け、思いを受け止めながら行動の後押しをしました。
 その後、ある企業への出会いで気持ちが再び高まった彼女は、ポートフォリオを大幅に作り直し、質の高いものを完成。この武器を手にして、積極的な活動を続け卒業直後、内定を獲得。彼女の粘り強い姿勢が志望業界へのチャンスをつかみ取りました。
 そして現在、新人イラストレーターとして、必要なスキルを少しずつ身につけ、様々なことに取り組み、新たな目標に進んでいます。これから就職活動を始める後輩へ向けたメッセージの中で「就職活動は厳しい現実との戦いですが、頑張っていれば結果は見えてくるもの」と語っている彼女の姿を見て、確かな成長を感じました。

様々な「好きを仕事にすること」

 正社員として専門職に就く学生がいる一方、経済的自立のため一般企業等に就職をして制作活動と両立する学生やフリーランスなど、様々な形で進路を決める学生もいます。大切なことはどのような形態であっても、続けること。これがプロへの第一歩だと感じています。

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