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Vol.25-4

『職業研究』2020年No.2より

キャリアカウンセリングの様々な現場で活躍される方々によるリレーコラム。

支援者自らが変化に対応しながら、問い続けること

佐藤寿子氏 画像

2級キャリアコンサルティング技能士
国家資格キャリアコンサルタント

佐藤寿子

 前回から3ヵ月近くが経ちますが、いかがお過ごしでしょうか。新型コロナウイルスによって社会が大きく変化していますね。今回は、この3ヵ月のカウンセリング対応と、それを踏まえた支援者としてありたいこれからの姿を考えていきたいと思います。

オンラインでの対応へ

 ウィズコロナ状況下で、個別カウンセリングは学生の安全を優先し、3月下旬からオンライン形式を導入しました。春休み明けに緊急事態宣言が発令され、休校期間が大幅に長期にわたりました。特に一人暮らしの学生に対してケアの必要性を感じました。すぐにこの環境下での学生のニーズを把握するために、緊急アンケートを取りました。その集計結果を生かし、カウンセリングを中心に、メール配信やセミナー実施などの一層の対応に注力しました。
 外出自粛期間で人との接触機会が減ったことや先が見えない不安の声や、Web面接等の特有な条件下での就職活動についての相談が寄せられました。
 Webカウンセリングの実施を通じて、これまで利用が少なかった夜間部の学生等とも関わる機会が増えました。場所を問わないため、スケジュールの融通が利くようになったことが関係していると思います。また、オンライン空間だと周囲を気にすることがなく会話に集中できるので、通常よりも話しやすい様子になっていた学生も見られました。

オンラインの特徴について

 このように環境面や利便性に支障が少ないことを実感しましたが、対面と違い、非言語的な部分を読み取ることが難しい部分はありました。
 例えば、学生の通信や住環境による問題で顔が出せないことがありました。私はあらかじめ「最初だけ挨拶のため、顔を合わせましょう」とお伝えし、了解を得て進めました。このように一瞬でも顔を合わせられると、お互いの様子が見え、安心につながりやすいと感じました。ただ、この面談形式が常態化するにあたって、メンタルヘルス不調を感じている学生も見受けられましたので、まず近況を聞くなど心理的な配慮をより心掛けました。加えて、個人情報の保護を守るため、個室で対応している様子や状況をお互いに確認して、安心安全に留意しました。
 セミナーは、通常よりアイスブレイキングを丁寧にし、安心できる雰囲気で進めました。その中で学生の積極的な姿勢を感じました。講義形式では、終了後に個別に質問が寄せられ、全体の理解を促すことが難しい状況でした。そのため、オンライン形式では事前質問を踏まえ実施しましたが、講義中にも質問が寄せられ、活発なやり取りが生まれました。オンライン環境が能動的な行動の後押しをしたのかもしれません。今後も参加者と一体となった学びの形を模索したいです。

柔軟性をもって変化に対応すること

 今回のことを通じて感じたことは、制約が多い環境の中でもいかに柔軟性を生かしながら支援できるかが問われていることです。これまでの知見や経験を踏まえながらも、それだけにとらわれることなく、今まで知りえなかった状況においても今後の見通しや相手のニーズを想像しながら対応していく力が試されていると思います。
 そのためには、複眼的にとらえて変化に対応できる力と周囲との関係性作りが非常に重要だと感じました。日ごろからチームを始めとした関係各所との意思疎通のスムーズさを持っていることが物事を動かしていくことの第一歩です。加えて、社会情勢を踏まえて、書類の電子化や今後増えてくる多様な働き方や新しい生活様式にも対応する準備も必要だと思います。
 意思決定に時間を要する組織だと、変化を起こしにくいと想像します。確かに、Webでの支援は安全面を考慮する必要などハードルがあることは否めません。ただ、このようにお伝えできることも実践があったからだと考えます。今後についても、この状況下で見えたことをどう改善し実行していくかが重要で、それらが相談者の方に寄り添い、支援することにつながると思います。
 加えて、この状況で支援者自身も様々な不安を感じることもあります。世界中の人ほぼ全員が当事者ですので当然だと思います。ストレス対処のセルフケアはもとより、レジリエンス力を高めながら、健やかに生きることを一人の人間として大切にしたいです。

 個人的なことですが、先日よりフリーランスに転身いたしました。今後も個人の支援、組織や社会にできることを考えて、皆様と一緒に歩みを進めていきたいです。
 このような機会をいただきました編集部ご担当者様に深く感謝いたします。また、関係者の皆様、お読みいただいた皆様にもお礼申し上げます。