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Vol.3-2

『職業安定広報』2005年1/21号より

キャリアカウンセリングの様々な現場で活躍される方々によるリレーコラム。

掌の中にあるものを大切に

針原桂子氏 画像

女性と仕事の未来館
キャリアカウンセラー

針原桂子

 その方は、相談室で、「仕事に全く興味が持てないんです」と大きくため息をつかれました。相談にみえられたのは、20歳代前半の女性で、大学卒業後、地方公務員になって2年目の方でした。
 「就職活動に出遅れて、たまたま今の職場に合格したから就職はしましたけれど、早くから就職活動をしていたらもっと別の仕事があったと思うんですよね…。配属された広報の仕事にも別に興味がありませんし…」
 そこで、今の仕事の内容について伺うと、「主に広報誌作りです。毎回同じような紙面構成なので、去年のを見れば、誰でもできる仕事です」とのことでした。さらに、そのほかの部署でやってみたい仕事はないのかを伺ったところ、「いろいろ部署はありますが、興味がないので、どんな仕事があるかよくわかりません」とのことでした。

 これは、「鶏と卵」のようではありますが、「興味がないから知らない」と考える人が多いのですが、「知らないことに対しては興味を持てない」という考え方もできるのです。
 この方にも、「1年目は仕事を覚え、必要な情報を収集する、2年目からは仕事を工夫し、提案していく」というつもりで仕事をしてみることをお勧めし、広報事業に対する役所側と住民側双方のニーズを把握したり、官民を含めた様々の組織の広報媒体に関する情報を収集したりしながら、さらに工夫できる点はないかを考えてみてはとアドバイスしました。さらに、他の部署の仕事にも目を向けて、その内容を調べたり、上司や先輩の話を聞いたりしながら、自分なりのキャリア・パスや目標を描いてみることもお勧めしました。

 「仕事に興味が持てない」、「もっと興味を持てる仕事に転職したい」というご相談をよく受けますが、その中には、今、自分が就いている仕事のことは上の空で、「もっと興味を持てる別の仕事があるはずだ」と、まさに、青い鳥探しをしている方が多く見受けられます。  もちろん、就職などの人生の選択場面では、様々な選択肢があります。でも、そのうちの一つを選んだ時点で、そのほかの選択肢を捨てたのだという自覚を持つことが重要です。いつまでも、よそ見ばかりしていては、せっかく、手中にしたチャンスを活かすことができないまま、台無しにしてしまいかねません。
 職業経験の乏しい人の中には、仕事は最初から楽しくてやりがいを感じられるもので、そう感じられない仕事は自分の合った仕事ではないと、単純に考えてしまう人も多いのです。でも、特に、初めての仕事では、最初から楽しくて仕方がないと感じられる人のほうが珍しいと思います。自分の仕事にしっかり目を向けて、仕事を知り、努力し、工夫することによって、実績を積み、評価を受けて、初めて、仕事の本当の面白味がわかってくるものです。
 フリーターやニートの増加が問題とされていますが、中には、今回の事例の方のような気持ちから退職してしまい、その後、仕事を転々としたり、仕事に就く気になれないでいる人も多いと思われます。ハローワークでの若い求職者に対する相談や職業指導においては、仕事に対する考え方などを含めてアドバイスなさることと思いますが、今回ご紹介したような視点も参考にしていただけたらと思います。