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Vol.4-2

『職業安定広報』2005年5/21号より

キャリアカウンセリングの様々な現場で活躍される方々によるリレーコラム。

「啓発的経験」と「気づき」

土肥眞琴氏 画像

(社) 大阪府経営合理化協会
人財開発部マネージャー

土肥眞琴

 若年者のキャリア形成支援において、特に効果的とされるものに「啓発的経験」があります。「インターンシップ」や「日本版デュアルシステム」がその代表例と言えましょう。
 (社)大阪府経営合理化協会では、平成14・15年度の2年間にわたり、経済産業省・産業技術人材育成インターンシップ推進支援事業のマッチング団体として、協会会員企業を中心とした中堅・中小企業とインターンシップ希望学生のマッチング事業を実施、現在も継続中です。

 私が「インターンシップ」に関心を持ったのは、日本産業カウンセラー協会向上訓練での木村周先生のご講義がきっかけでした。具体的な職業・企業情報に乏しく、アルバイト等、ごく限られた仕事体験・人間関係からの情報だけで初職を選択してしまう、あるいは選択することを恐れて、結局フリーター等に進んでしまうような学生達にとって、非常に有益な制度であることは言うまでもなく、企業PRの不得手な中堅・中小企業にとっても、将来の人材確保に結びつけることもできる、いい機会だと考え、勤務先での導入に取り組んだのです。幸い、近畿経済産業局の当時の担当係長から、全面的なご助言・ご支援をいただき、「インターンシップは初めて」という企業・学校を中心に、マッチング実績を挙げることができました。また弊協会でも、ごく少人数ではありますが、インターンシップ実習生を受け入れております。

 この経験を通じて痛感しているのは、インターンシップを本当の「啓発的経験」とするためには、参加学生の「自発・自立・自律」が不可欠だということです。もちろん受入企業や送り出す学校の責任も大きいのですが、いわゆる「お膳立て」カリキュラムに乗っかって、行事的にインターンシップに参加する学生が増えるにつれ、「ミスマッチ」も増えています。
 来春新卒採用予定者数増加が喧伝されるにつれ、利にさとい学生のインターンシップ参加意欲は一気に減退、受入企業数に見合う学生が集まらない傾向も出てきています。
 「自分は将来こういう仕事に就きたい」、「こういうことを教えてもらいたい」等、自分の希望を明確にすることもなく、「学校からここに行け、と言われたので」、「就職するわけではないから、ここでもいいかと思って」と平然と言い放つ学生では、現場の社員と良好な人間関係を結ぶどころではありません。
 なぜインターンシップに参加したいのか? 何を学ぼうと思うのか? 等、一番基本となる問いに、自分なりの答えを出す努力は最低限必要だと思います。企業にとっても同様です。企業の場合は、「答えは出てないけど、まあ、やってみようか」では、貴重な時間とお金を使って参加する学生に対して、あまりに無責任です。また受入企業の社員にとっても、通常業務に附加する形でインターンシップ研修生への指導を行うのですから、その負担は大変なものがあります。(研修期間中に見学に行きますと、直接指導をしている社員の方々の善意・熱意に、胸が熱くなることがしばしばあります。)
 「啓発的経験」には、その人なりの「気づき」がなければなりません。相談業務に携わる方々には、安易な「仕事経験」との差異を明確にしたご指導をお願いしたいものです。