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Vol.5-3

『職業安定広報』2005年10/21号より

キャリアカウンセリングの様々な現場で活躍される方々によるリレーコラム。

障害をお持ちの方の採用支援現場から

池辺 誠氏 画像

(株) ゼネラルパートナーズ
キャリアカウンセラー

池辺 誠

 私どもは、障害をお持ちの方に特化した就業・転職支援を行っている組織です。
 現状では、年々多くの方にご認知をいただき、採用支援や、お手伝いができる幅が広がってまいりました。今回は現場から障害をお持ちの方がどのように就業や、転職活動を行っておられるのかをお伝えしたいと思います。

 唐突なのですが、ここで皆さんに一つだけ質問します。
 皆さんは、「障害者」という言葉を聞くとどのようにお感じになられるでしょうか?
 「大変そう」「どんな生活をしているのだろう?」と思われる方も多いのではないでしょうか。実は私も、現在の仕事をするまではそのようなことをまったく知らなかったのが正直なところであり、関心を持ちはじめたのはこの業界に携わるようになってからでした。

 何が言いたいのかと申しますと、「障害者」という認識が健常者には言葉としてあっても実際に理解されているケースは少ないことがわかってきました。このような側面から見ると、障害をお持ちの方が就業する際に就業先の方に理解をいただいて働きやすい職場として就業するのは、双方の理解が必要である点を感じる機会が多くあります。そんな中で採用事例をいくつかピックアップして皆様にお伝えしたいと思います。
 まず我々のサポートの流れを説明させていただくと、依頼者の方が来談されてキャリアカウンセリングを実施します。ご転職をお考えになった背景や、障害の詳細をうかがいます。最初の対面ですが、お体や障害の詳細についてももちろんですが、内面的なお話をうかがうのはとても大切な時間です。いかにその方にフィットした職場をご提案できるかもその時にうかがうお話がとても重要になってきます。
 私は、日々依頼者の方々と接しているのですが、障害の種類も上肢や下肢、内部、腎臓、聴覚等と、それぞれ異なり職場も異なるわけですから、就業や転職をお考えになる背景も様々です。

 一つの相談例を挙げさせていただくと、相談にいらしたTさんは、20代の男性でした。彼は、腕の障害を持っておられました。最初にお会いした時には、「活動がうまくいっていない」というお話をされていたことを今でもよく覚えています。
 その方が転職をお考えになった背景は、前職でやっていた営業事務の仕事において、障害者としての評価や管理システムを逸脱したいという気持ちがありました。
 もともと彼は、障害者枠で採用されたのですが、能力を高めていく努力姿勢や、価値観も柔軟で成長性に富んでいる積極的な印象を受ける方でした。そんな彼の「同じようなフィールドで評価されたい」という気持ちは、ご自身で応募した企業にはうまく伝わらずに、面接に行った段階で話をするものの双方の意向が合わずに辞退が続いていました。そんな彼の気持ちを汲み、求人を複数紹介させていただき手法を変えた活動を再開したのですが、そこで彼に転機となる出会いがあり、最初に希望していた企業や職種とは違った分野で、活躍のフィールドを見つけて入社後も良い評価を受けながらがんばっています。入社意志を決めた時の彼の言葉ですが、「プロ意識を持って働ける集団に行きたいんです」と話してくれたことが印象的でした。私の勝手な推測ですが、その言葉の背景に「障害者としてではなく、一人の人として、活躍していきたい!」という強い意志を感じたような気がして、刺激を受けたサポートでした。

 これを一例にとってみると、サポート対象として障害をお持ちの方を考えるとき、その方の障害や状態にもよりますが、配慮が必要な方と理解のみでよい方と大きく二つに分けられると思います。
 まずその点の相互理解が最初の一歩であり、障害をお持ちの方が就業をしていく中で大切なことです。そして一方では健常者同様に活躍したい人が多いのも事実です。
 私たちは、そのようなお一人お一人の背景をしっかりと把握させていただき、双方が納得した状態で就業して活躍されている現場を見守っているわけですが、今後も同じようなお悩みを持って相談に訪れる方々が多くいらっしゃるのではないでしょうか。
 「誰もが納得して、就業し働いている環境」を目指して、ベストな状態を支援していくために、日々依頼者の方から学ばせていただいている昨今です。