メインコンテンツへスキップ

Vol.5-4

『職業安定広報』2005年11/21号より

キャリアカウンセリングの様々な現場で活躍される方々によるリレーコラム。

障害をお持ちの方と共存していく社会のためにできること

池辺 誠氏 画像

(株) ゼネラルパートナーズ
キャリアカウンセラー

池辺 誠

 我々が、障害をお持ちの方の就業、転職支援をさせていただいていく中で日常的にコミュニケーションをとっていますが、就業を希望する皆さんそれぞれのご要望があり、また採用する側の要望もあります。そんな声を結んでいるのが我々の役割でもありますが、現状ではそれぞれの歩み寄りや努力が以前に比べて活発になってきました。

 例えば、個人の方の歩み寄りを例にとって挙げさせていただくと、健常者の方におうかがいしますが、仮に皆さんが障害を持たれた時に就業される環境に何を望まれますか? 障害の部位や状態にもよるかと思いますが、理解や配慮があると安心できますよね。そんな理解や配慮がありながらもうまくいっていないケースもあります。
 一例ですが、実際に就業されていて、求められる業務量を遂行できる能力が十分ある方なのに、会社から業務量を一定量に規定され、その中で作業を繰り返すよう指示されたため、その方はかえってそのことを「仕事がない」「私は必要とされていないのか?」と捉えてしまい、時間を持て余してしまう結果、もっと活躍できる環境へ移る方がいらっしゃいます。また対照的ですが、業務量が障害と比例して負担になり、現状の環境においては負荷に耐え切れずご退職されるケースもあります。
 一長一短であり、環境によっても異なりますが、どうすれば上記のようなケースが未然に解決できるのかを我々支援する立場から申し上げますと、当たり前のことですが「相互理解」が大切です。インターネット等で情報が過多になったと感じる一方、残念ながら受身となり、自ら真意となる情報を仕入れる手段や方法に積極的でない方が増えてきているようにも感じます。「相互理解」と言っても、ただ情報を受け止めるのではなく、自分が大切にしたい情報を明確にし、それを事前にはっきりと確認することがとても大切になります。
 「わかったつもり」「大丈夫だろう」という小さいことがいくつかあると、就業後にとても苦労されることになったり、退職せざるを得ないケースが発生したりします。入社してからわかることもありますが、入社前には慎重に自分の大事にしている部分を確認する。また面接で直接聞くのが難しいようであれば、我々が確認をしてお伝えしていく。このような過程で納得できる判断材料を得ることがとても大切です。
 就業する側が受身だと、途中で諦めてしまいがちですが、採用する側も納得して入社して活躍してもらいたいと願っています。
 最近では、就業を受け入れる企業側でも積極的に受け入れに理解が広がっている状況を以前にも増して見るように感じます。職域の拡大や、就業環境やインフラの整備が配慮されて今後も良くなるであろう声を耳にします。そういった努力がある中で、就業する側の努力も忘れることができません。大きいテーマになりますが、私たちは、一人では生きてはいけません。他人のために奉仕してその対価として報酬を得るという実社会が存在します。

 話は変わりますが、私が尊敬する人の一人にジョン・フォッピという方がいます。彼は、生まれながらに両腕がないのですが、アメリカで活躍するスピーカーです。
 そんな彼の言葉の中の、私が好きな言葉で最後を綴りたいと思います。
 「肉体的や環境的なハンディキャップは存在しない、この世に存在しているハンディキャップは心や感情的なハンディキャップのみである」「ないものではなく、あるものに焦点を当てる。自分が持っていない物ではなく、持っている物に焦点を当てる。自分が満たされていること、今が豊かであることを感じるときに可能性が開かれる」
 私たちは、日々無いものに目がいきがちなのかもしれません。
 物事の受け取り方に明るい光を照らしていく彼のように、日々自己研鑽を忘れずに明日を見つめていきたいと願う日々です。