メインコンテンツへスキップ

Vol.7-2

『職業安定広報』2006年5月号より

キャリアカウンセリングの様々な現場で活躍される方々によるリレーコラム。

保護者を通してつながるニート状態の若者と支援機関

橋本光生氏 画像

「育て上げ」ネット 
キャリア開発事業部 主席研究員

橋本光生

 私の所属するNPO「育て上げ」ネットでは、昨年よりニートの保護者を対象としたセミナーを実施しています。ニート状態にある若者は、初対面の人に会うのが苦手で、支援のための場に来ること自体が困難です。そこで、保護者を対象にセミナーを開催し、保護者を通じて若者に情報を届け、保護者の協力を得て若者が支援機関などにつながるように支援しています。このセミナーを通して、ニート支援における保護者の理解と協力の重要性があらためて明らかになりました。
 その一例として、昨年、足立区のご協力を得て実施したセミナーについて紹介します。このセミナーは、昨年の11月から12月の間の土曜日に4回夕方に実施し、4回の参加者合計28名、あだちヤングジョブセンターを会場に私も含む「育て上げ」ネットキャリアカウンセラーの講師で実施しました。

1 目的

 ニートや引きこもりなどの若年者の自立に関する課題、就職活動以前の課題を抱える若年者の保護者を対象に情報提供やワークショップの機会を提供し、親子関係の中で若年者が自らの意思で今後について考えられるように支援する。

2 セミナーの内容
  1. (1)参加者間の緊張を解き、交流できる環境を作るための「アイスブレイク」(10分)
  2. (2)現在の就職や若者への支援機関などの情報提供(50分)
     ・公的な支援機関とNPO運営支援機関の利用のしかた
     ・就職活動がうまく進まないケースの紹介
  3. (3)参加者どうしが体験的に学ぶグループでのワークショップの実施(60分)
    1. 1)「傾聴」のワークショップ…2人一組のペアになり、「聴く姿勢でない場合」と「傾聴する姿勢」の2通りで話をして、「我が子の気持ちをじっくり聴くことの大事さ」を体験する
    2. 2)「分かち合い」のワークショップ…2人以上のグループになり、「自分の一番聞いてほしいこと」を順番に話す。話している以外の参加者はその話に傾聴する
3 セミナーの効果と課題

 参加者の8割が母親お1人の参加で、残り2割の中に、父親、若者本人と保護者、若者の両親での参加が含まれています。参加された多くの方が、我が子のニート状態が長引くことに悩み、1人で我が子のことを悩んでいて、どうしたらよいのかわからず、そのことを相談できる相手もいない状況でした。
 参加者の声の一部を紹介します。 「とてもわかりやすくてよく理解できました。また、個別相談も受けたいと思います」
「我が家は長いニートなので、親の相談も必要かなと思います」
「分かち合いワークショップがおもしろかったです。傾聴の効果も実感しました」
 参加者は支援機関を我が子がうまく活用できるように親としてサポートするイメージができたようです。また、「自分は我が子の進みたい方向や気持ちを十分に聴けていただろうか」というような気づきを得られた方も少なくありませんでした。多くの方から感謝の言葉をいただきました。このセミナーと個別の保護者相談を合わせて受けられることで、10名の若者が支援機関につながるケースができたのが成果です。今回はニート状態が2年以上の保護者が多かったですが、今後は「子どもがニートになるのでは」と不安になった時点でもご参加いただけるようにしたいと考えています。