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Vol.7-4

『職業安定広報』2006年7月号より

キャリアカウンセリングの様々な現場で活躍される方々によるリレーコラム。

ニート予備軍を減らすキャリア支援の事例

橋本光生氏 画像

「育て上げ」ネット 
キャリア開発事業部 主席研究員

橋本光生

 前回までニート状態の若者支援について紹介してきましたが、若者がニートにならないための取り組みも始めています。
 群馬県の高崎商科大学では、現在「新入生のための自分戦略づくりガイダンス」という取り組みを進めています。これは「新入生の早い時期からキャリア支援を強めたい」という大学の要望に応じてこちらから企画提案し、詳細について何度も相談し今年の4月からスタートした企画です。

1 目的
  • 1年生の春から自分戦略=将来につながる目標を持って講義はもちろん課外活動でも学び行動する中で、充実した大学生活を送るきっかけを提供する。
  • 1年生が自分自身の目標に向かって行動することで、結果として自分にベストな就職や進路につくことができ、そのことが1年生のニート予備軍を減らすことになる。
  • 1年生の保護者にも大学の進めるキャリア支援について充分に理解していただき、学生と保護者と大学のベクトルを同じにする。
2 企画内容

(1) 入学式終了直後の保護者向けのセミナー

  • 大学事務局次長から保護者への問題提起と大学の進める1年生サポートの進め方の説明
  • 10人ずつ15のグループに分かれて、大学スタッフが司会となり保護者同士のグループ討論

(2) 1年生対象のキャリアセンター主催ガイダンス
 5月から7月までの間に3回、グループワーク形式で開催

  1. 5月…自分の「好き」「得意」「強み」を語り合い、やりたいことを考える
  2. 6月…将来やりたいことから大学生活、1年の夏休みにやることを決める
  3. 7月…夏休みの行動計画の詳細を決める。将来につながりそうなバイトなど、「どこ」で「何」を行うのか
3 企画の成果

 入学式後の保護者セミナーには新入生349人の保護者250人が参加し、グループ討論では、「新入生の姉が就職で苦労したので、大学が早くからサポートしてくれるのはありがたい」「就職など不安なことについて大学がこのように親切に教えてくれて安心できた」「短大なので、この秋から就職について考えないといけないと知った」と大変好評でした。
 5月に行われた最初の1年生対象のガイダンスには21人が参加し1時間近く2人ペアで自分の「好き」「得意」「強み」を語り合う中で、今の時点でやってみたいこととして「人に何かを教えるボランティアみたいなものをしたい」「タスマニアに行きたい」「コンピュータミュージック検定を受験したい」など、全員の大学生活の目標が明らかになりました。

4 今後の支援の計画

 同大学では2年生に対しても同様のガイダンスを実施すること、また 短大ではこのガイダンスの内容を講義の中で一部実施することが検討されています。
 大学のキャリアサポート室では、今度の夏休みに、できるだけ多くの学生が自分自身の目標に向かってそのための第一歩となるアクションを起こせるような支援を準備しています。具体的にはそれぞれの学生の目標につながるアルバイトやボランティアなどの情報提供や「何をしていいかわからない」学生への個別相談などを進めることを計画しています。
 ニート状態にある若者の多くが、「学生時代に社会に関わる経験をしていない」「家と大学の教室の往復以外にこれといった活動をしていない」と言います。大学、高校段階でのキャリア教育、キャリア支援がいっそう重要になっていると思います。