活用事例●成城大学
「漠然とした不安」を可視化する
―RCC就職レディネス・チェックの活用―
成城大学 キャリアセンター

長尾繁樹氏
成城大学 キャリアセンター主任
キャリア教育では、正課科目(キャリアデザイン科目)の運営、「成城大学就業力育成・認定プログラム」の運営・統括を担当、また、キャリア支援、就職活動支援、学生個別相談も担当する。GCDF-Japanキャリアカウンセラー。
■最初の実施
――どのようないきさつでRCC就職レディネス・チェックを導入されたのですか。
長尾 平成23年度、このツールの開発時点に依頼されてパイロットケースとして実施したのがきっかけです。その時は、3年生向け少人数講座「就活スタート講座」と個別相談時に実施しました。「就活スタート講座」は10月下旬に各コース最大10名で4コース、対象は計38名でした。「就職」について基本的に考えさせる、あるいは就活へのモチベーションをもってもらう、というきっかけ作りの講座です。
学生が自分の現況を客観的に把握し、今後どのような対策が必要か、改善点は何かを理解する一つの情報(ツール)になるのではないかと思い、やってみることにしました。
――学生の反応はいかがでしたか。
長尾 「環境理解度が低かったので、よく世間のことを学ばないといけないなと思った」
「結果の通り、企業についての知識が不足しているため今後、業界研究をしっかりやりたいと思った」
等の感想がありました。全体としては、Aの就職意欲度は高いけれど、具体的な方法についての情報が不足している、という結果でした。
この講座に参加する学生は就活に対して漠然とした不安があり、RCCのアセスメントによってそのもやもやした不安の原因の一部が可視化され、自覚することができたのではないでしょうか。
――注意点としてはどのようなことをお感じになりましたか。
長尾 実施者(ファシリテーター)が内容をよく理解して実施する必要があります。各尺度についてきちんと解説できるようにしておく。それと、この前後にどういうものをセッティングするかを考えること。学生の結果の特徴に対して、どのような支援をするべきなのか。RCCはそれを考える材料も提供してくれるものだと思います。
また、学生から「何点取ればよいのか」という質問が多く寄せられましたが、点数化されるので、その点数に左右されてしまうおそれがあるということですね。そうではないんだということをわかってもらいます。
■実施2年め
――続いて翌年も実施されたわけですね。
長尾 翌24年度も同じく「就活スタート講座」の中でやりましたが、あらためて「レディネス」の意味と各尺度の解説を行いました。終了後に2枚目の回答用紙を配付し、再度の実施を促すとともに、「フォローアップ面談」による個別支援を用意しました。
――その後2年生への実施もされたのですね。
長尾 24年度末に、テスト的に2年生にWeb版を実施してみました。これから就活に取り組む、つまりガイダンスや個別相談を利用する前の2年生の意識を調査して、われわれがいかに効果的な支援を構築していくかについての資料とするねらいがありました。3年生以降に大学が提供していく支援を受けることによってどのように変わっていくのかを知る手段にもなる、と。
また、個別面談で就活への不安を訴える学生は、「未知の体験への恐れ」や「先入観」からくる「漠然とした不安」や「焦燥感」を抱えていますが、RCCを受けてもらい、結果に対する解説・アドバイス、就活全般の流れの説明などをわれわれが行うことによって、自分に何が不足しているのか、何をしたらよいのかが明確になり、不安が薄れたということもありました。先ほども申し上げましたが、具体的な課題を自覚するための助けになります。人は自分が何に不安なのかがわからないことで一層不安になりますからね。「自分の現状はこうで、これからこういう方針でこういう行動計画を立てていけばよい」ということが理解できれば、不要な心配をしなくてすむわけで、それには非常に有効なツールだと思います。
■3年め Web版を実施
――平成25年度はWeb版を実施されていかがでしたか。
長尾 3年生の6月の第2回就職ガイダンスで説明を行い、IDとパスワードを発行しました。各自で実施して結果をプリントアウトし、第3回ガイダンスで持参してもらいました。そこでは総論的なこと、重点事項を中心に解説し、聞きたいことがあったら別途個別相談で対応ということにしました。Web実施への学生の抵抗はありませんが、必ず各自実施するよう促してもやらない学生もいるので、PCのある教室での一斉実施など何か工夫が必要かもしれません。それとWeb版の良さは、やはり集計結果表示が便利で、データが蓄積されることですね。
第3回就職ガイダンスの様子
結果を見ると、C、Dは低かったですがA、Bは高く、学生の意識は思いのほか進んでいました。具体的な取り組み方などの講座にうまくつなげていく必要があります。今回はマスのガイダンスでの実施でしたが、個別対応とも連動していることが大切でしょうね。
■RCCの意義
――継続的にやってこられて、就職活動支援ツールとしてのRCCについてどのようにお感じになりますか。
長尾 学生にとっては、「就活」を意識し、具体的に取り組む際の指標として、現時点での自身の状況を客観的に理解し、これからの指針を考えていくために有効だと思います。
一方、大学にとっては、学生がどの時点でどのような現状にいるのかを把握し、それに合わせた支援体制を検討することができる点がいいですね。実施前後のケアは必須です。可能なら実施後にグループワークなどで学生同士が共有し、それをもとに今後の指針を立てたり、具体的行動につなげていければ一層の効果が期待できます。われわれとしてはそういう形で継続的にサポートしていければよいと考えています。

成城大学
開学●1950年
学生数●約5,700人(2013年5月現在)
所在地●東京都世田谷区成城6-1-20
学部●経済学部、文芸学部、法学部、社会イノベーション学部