2026.06.15New
トピックス
就労選択支援とは
2025(令和7)年10月より、新たな障害福祉サービスとして、「就労選択支援」が開始されました。
就労選択支援とは、「障害者本人が就労先・働き方についてより良い選択ができるよう、就労アセスメントの手法を活用して、本人の希望、就労能力や適性等に合った選択を支援する」制度です。障害のある人が自分の働き方について考え、適切な進路選択を行えるようサポートすることを目的としています。
具体的には、就労選択支援事業所において、相談者(障害者)と支援者が協同してアセスメントを実施し、多機関連携によるケース会議や関係機関との連絡調整を行い、本人の特徴やニーズに合わせた就労選択を支援します(図1)。
図1 就労選択支援の流れ
就労選択支援の4つのプロセス(図1の①~④)のうち、「①作業場面等を活用した状況把握(アセスメント)」では、相談者の就労能力や適性、ニーズや強み、職業上の課題など、本人の就労に関する状況把握を行います。面談、標準化検査、職務分析、ワークサンプル、模擬的就労場面、現場実習などの手法によってアセスメントを実施し、相談者の自己理解を促すとともに、本人の就労に関する情報を具体的に整理します。
就労選択支援におけるアセスメント・ツールの活用
就労選択支援では、上記のアセスメントから得られた情報をもとにプロセスを進めていくため、本人の状況を効率よく正確に把握することが重要です。目的に応じたアセスメント・ツールを活用することにより、効果的なアセスメントを行うことができます。
就労選択支援に利用できるアセスメント・ツールには、「職業レディネス・テスト」(VRT)や「厚生労働省編一般職業適性検査」(GATB)、「キャリア・インサイト」、「就活に取り組む人のための準備度チェックリスト」(SSC)、「障害者用就職レディネス・チェックリスト」(ERCD)があります。それぞれのツールの主な対象者と測定される内容は図2のとおりです。
図2 各アセスメント・ツールの主な対象者と測定内容
就労選択支援で用いられるアセスメント手法のうち、「面談」と「標準化検査」でのアセスメント・ツールの活用例をご紹介します(図3)。
図3 就労選択支援のアセスメント
⑴ 面談での活用
支援の入り口となる面談では、相談者の現在の状況と、就労に関する希望やニーズなどを端的に把握することが大切です。
●就活に取り組む人のための準備度チェックリスト(SSC)
仕事に対する考え方や基本的な生活習慣などに関するチェックリストに回答することで、相談者の「現在の状況」と「就活準備度」を確認します。スマートフォン(タブレット・パソコンも可)を使って気軽に実施でき、その場ですぐに結果を見ることができます。初回の面談でも取り組んでもらいやすく、相談のきっかけづくりに役立ちます。
※チェックリストの設問は、一般雇用の採用基準に基づいた項目により構成されています。
チェックリストの結果は、「現在の状況」を示す「仕事に対する考え方」「健康な生活」「お金の管理」「家庭・社会との関わり」「将来への思い」の5つのテーマと「就活準備度」が、それぞれレーダーチャートと棒グラフによって表示されます。
SSCのトップ画面と結果の表示イメージ
1つひとつの設問への回答を通して、相談者が自身の状況を客観的に振り返り、就職活動に向けた意識を高めることができます。また、支援者にとっても、相談者の現状を端的に把握することができ、本人のニーズに合った支援につなげることができます。
●SSCに関連するアセスメントシートの項目例
・就業経験の有無
・就業経験の振り返り
・働く動機、目的
・求人情報の収集
・希望する仕事
・資格、免許
・希望する労働条件
・職務経験のアピールポイント
・就労のための基本的事項(職業生活、対人関係等)
SSCの詳細・お申込み
●障害者用就職レディネス・チェックリスト(ERCD)
障害のある人が一般企業に就職して適応していくために必要とされる心理的・行動的条件について、どのくらい準備が整っているかを確認します。一般的属性、就業への意欲、職業生活の維持、移動、社会生活や課題の遂行、手の機能、姿勢や持久力、情報の需要と伝達、理解と学習能力の9つの領域から総合的に本人の特徴を把握することができます。
チェックリストへの記入は、相談者本人ではなく、観察や面接・検査などを通して本人の特徴を知ることのできる支援者が行います。複数人による記入も可能です。
ERCD手引
面談の中で本人や保護者(家族)と一緒に実施することで、本人と協同して必要な支援を整理することができます。課題だけでなく、できることや強みを見つける機会にもなります。また、支援の過程で繰り返し実施することで、就職への準備状況や支援の効果を確認することができます。
●ERCDに関連するアセスメントシートの項目例
・就業経験の有無
・資格、免許
・求人情報の収集
・希望する労働条件
・職場で配慮してほしいこと
・医療上の措置(利用している医療機関、通院・服薬・休養の状況)
・就労のための基本的事項(作業遂行、職業生活、対人関係等)
・就労継続のための環境(職場・職務への適応、労働条件の設定、周囲の配慮等)
ERCDの詳細・お申込み
就労選択支援では相談者と支援者の協同によるアセスメントが求められますが、面談の中で両者が一緒にSSCやERCDを実施することにより、本人の基本的な情報や課題を共有することができます。そのうえで、後述するVRTやGATB、キャリア・インサイトを使って興味や能力などを測定することで、本人の特徴に合わせた効果的・総合的な支援につなげることができます。
⑵ 標準化検査の活用
標準化検査とは、検査の内容や実施方法、採点・解釈の基準等が統一され、その定められた方法に従って行う検査のことを指します。厚生労働省「就労選択支援マニュアル」では、その1つとしてGATBが紹介されています。そのほか、標準化検査にはVRTやキャリア・インサイトがあります。
●職業レディネス・テスト(VRT)
職業に関する「興味・関心」や「自信」の程度と、日常生活における「基礎的志向性」を捉えます。「好きなこと・やりたいこと」から職業を探索することができます。ワークシートを使ってプロフィール(グラフ)を作成することで、相談者が自分の興味の傾向を目で見て理解することができ、ケース会議や関係機関との連携の場面においても、検査結果をわかりやすく共有することができます。
VRTには、主に中学・高校生を対象とした[第3版]と、大学等の学生や若年求職者を対象とした〔学生・若者版〕の2種類があります。どちらも設問の内容は同じですが、結果を表示するための基準が異なり、〔学生・若者版〕のほうが結果(得点)が低めになることがあります。就労選択支援で用いる場合は、年齢だけによらず、相談者一人ひとりの状況に合わせて、どちらか望ましいほうを選択してもかまいません。
[第3版]と〔学生・若者版〕の使い分けについて、詳しくはこちらよりお問い合わせください。
VRT〔学生・若者版〕問題用紙・回答用紙
○便利な判定サービス
VRTは本人または支援者による自己採点が可能ですが、当会の判定サービスではプロフィールが記載された結果票をご提供いたしますので、本人や支援者によるプロフィール作成を省略できます。
判定のお申込みから結果票のご提供まで通常3~4週間ほどかかるため、支援の初期に検査を実施し、判定のお申込みと同時に自己採点を行ってアセスメントを進めたうえで、届いた結果票をケース会議や本人へのフィードバック、事業者等との連絡調整の資料として活用する、などの方法があります。
VRT〔学生・若者版〕結果票
●VRTに関連するアセスメントシートの項目例
・興味のある仕事
・興味のあること
・長所、アピールポイント
VRTの詳細・お申込み
●厚生労働省編一般職業適性検査[進路指導・職業指導用](GATB)
仕事を遂行するうえで必要となる「能力」を測定します。知的能力、言語能力、数理能力、書記的知覚、空間判断力、形態知覚、運動共応、指先の器用さ*、手腕の器用さ*の9つの能力(適性能)から、本人の特徴を捉えます。「得意なこと・不得意なこと」から職業を考える資料を提供します。*器具検査により測定。
検査結果は得点とプロフィールで表され、本人の持つ能力の特徴を視覚的に捉えることができます。GATBを実施して本人の能力の特徴を把握したうえで、ワークサンプルや模擬的就労場面、職場実習など、具体的な作業場面での観察を行うと、さらに正確な就労能力の評価につながります。
GATB検査用紙
○便利な判定サービス
GATBは支援者(検査実施担当者)による採点が可能ですが、判定やプロフィール作成を当会の判定サービスに任せることで、正確な検査結果を得ることができます。
VRTと同様、支援の早い段階で検査の実施と判定のお申込みを行い、支援者の採点によってアセスメントを進めながら、届いた結果票をケース会議等の資料として活用することができます。
GATB判定結果票(ベーシックコース)
●GATBに関連するアセスメントシートの項目例
・得意なこと
・長所、アピールポイント
・就労のための基本的事項(作業遂行:作業の正確さ・スピード、計算、文章の理解など)
GATBの詳細・お申込み
●キャリア・インサイト
「興味」「自信」「価値観」「行動特性」の4つの面から、多面的に本人の特徴を捉えます。パソコンを使って相談者が自分で実施し、その場ですぐに結果がわかりますので、効率的なアセスメントが可能です。本人の適性・特徴に関する情報を総合的に得ることができ、アセスメントシート作成の際の情報整理に役立ちます。結果画面を印刷し、面談やケース会議の資料として活用することもできます。
キャリア・インサイト メインメニュー(ECコース)
●キャリア・インサイトに関連するアセスメントシートの項目例
・興味のある仕事
・興味のあること
・得意なこと
・長所、アピールポイント
・就業経験の有無
・就業経験の振り返り
・働く動機、目的
・希望する仕事、職種
・重視する労働条件
・働きたいと思う職場環境
キャリア・インサイトの詳細・お申込み
※キャリア・インサイトの購入には、当会の「キャリア・インサイト講習会」を受講いただくことが必要です。講習会の詳細はこちらをご確認ください。
支援全体を通したアセスメント・ツールの活用
ここまでご紹介したとおり、就労選択支援の中の「①作業場面等を活用した状況把握(アセスメント)」の方法の1つとして、アセスメント・ツールが役立ちますが、ツールの実施によって得られた結果は、支援全体を通して活用することができます。
例えば、「②多機関連携によるケース会議」においてアセスメント結果を本人・家族と共有する際に、検査結果のプロフィール(グラフ)を使って、視覚的にわかりやすく伝えることができます。また、複数のツールを組み合わせて実施することで多面的に本人の特徴・適性を捉えることができるため、本人に関する総合的な資料として、「③アセスメントシートの作成」に役立ちます。そして、ツールごとに結果表示のフォーマットが統一されているので、効率的に「④事業者等との連絡調整」を行うことができます(図4)。
図4 支援全体を通したアセスメント・ツールの活用
厚生労働省「就労選択支援マニュアル」では、就労選択支援の目的として次の2つが挙げられています。
① 本人の強みや課題、特徴を本人と協同して整理し、自己理解を促すこと。
② その過程や結果を通じて、本人が進路を選び、決めていくこと。
アセスメント・ツールを活用することによって、相談者の興味・能力などの特徴や強み、課題等を把握し、本人の自己理解を深め、特徴やニーズに合った適切な支援につなげることができます。
次回は、就労選択支援におけるGATBの活用について、日本体育大学名誉教授 本間啓二先生より、実施上の留意点やプロフィール解釈のポイントを解説いただきます。
【参考文献】
・厚生労働省「就労選択支援マニュアル」
・独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構 障害者職業総合センター「就労支援のためのアセスメントシート」
●各ツールの詳細・お申込み
アセスメント・ツールの導入・ご利用についてのお問い合わせはこちら


![職業レディネス・テスト[第3版]](assets/cache/images/occupational_online/topics/202606_12-480x-774.jpg)



